電波女と青春男 / 入間人間

電波女と青春男 (電撃文庫)

電波女と青春男 (電撃文庫)

I can not fly.

非日常や妄想を片方の極に、日常と社会性をもう片方の極に。そしてヒロインは妄想世界の住人で、主人公が文句を言いながらもなんとか社会復帰させようとがんばっちゃう、そんな感じのお話。なんて都合が良い話と思いつつ、でもこういう話が私は大好きです。主人公とヒロインのどちらに感情移入しているのか微妙なところですが。
物語は主人公の真が都会にある叔母の家に引っ越すこととなり、念願の都会暮らしに舞い上がっているところからスタート。でも、広がる青春に期待に胸を膨らませた真の前に転がっていたのは、布団製のちくわ娘だったわけで。
その電波女こと藤和エリオは自分を布団でぐるぐる巻きにして宇宙人だと言い張るのですが、この行動と言動にはちゃんとそれなりの理由はあって。でもそれが逃避にしか見えない主人公の真にとっては腹が立ったり放っておけなかったり色々大変なのです。そしてそんな2人がたどり着くこのクライマックス。あぁ、なんという青春!
サブキャラクターたちもこの作者らしく一筋縄ではいかない人ばかり。クラスメイトにして真の青春ポイント増加要因三船さんは、どこかずれた天然さんぶりを披露して、謎のコスプレに身を包むスーパー虚弱体質の前川さんはやっぱり得体が知れないし。おまけにエリオの母である女々(39)の若作り色仕掛けに至ってはもはや何が何やら。そして何気なくこの叔母さんが一番ルートが進んでいる気がしますし。
でもやっぱり一番可愛いのは布団に巻かれたエリオ。宇宙人発言を繰り返しながら、非日常に逃げきれてない感じがまたなんというか放っておけない感じ。しかも中身は美少女とかどれだけズルいのかと!
さらには相変わらずにまわりくどく冗長な文体に大量のネタを仕込み、そこはかとなく底意地の悪さと世の中を斜めに見るひねくれっぷりが除く辺りはさすが「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」の作者。とはいえ読後感は実に爽快な青春小説になっていて、この作者ただ壊れた話を書くだけの人じゃないのだと感じました。ラストではラブコメ的人間関係も面白くなってきそうな空気で、これはちょっと続きに期待です。
余談ですが、この作者の小説は読んでいて凄く波長が合います。そこに逆に気持ち悪さを感じたりもして、なんだか嫌いだけど大好きみたいな複雑な気分に……。