- 作者: 桂遊生丸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/01/19
- メディア: コミック
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オムニバス形式で紡がれる物語の一本一本の完成度もさることながら、それが少しづつ重なり大きな一つの流れを作っているというのが素敵。受け継がれ繋がり続いていく物語を、母親と子供という視点を軸に描いている感じで、全2巻という長さの中でこういう大きく広がっていくような物語を感じられることは凄いなと。
悲劇にのまれ運命に弄ばれ、生きてそして死んでいく人々。大きな流れの中に浮かぶそれぞれのささやかな人生が、こんなにも魅力的に輝いて見えるということ。これは、愛に溢れた本当に素晴らしい作品だと思います。
短編の中では、サヴァンの胡散臭さが炸裂する「黄昏の賢者」も魅力的でしたが、個人的に一番好きなのは「美しきもの」。読んでいて思わず涙腺が決壊しました。
病床の弟と、歌を聴かせる姉を中心としたお話なのですが、この姉モニカの抱える複雑な想いを繊細に描き出していて素晴らしかったです。優しいシーン、寂しいシーン、恐ろしいシーン、そして感情の爆発。そういうものの描きわけが本当に凄いと思います。そしてラスト、彼女の選んだ道とそれが次の世代へ繋がっていくことに思わず感動。
桂遊生丸のマンガは前々から好きで読んでいるのですが、本当に上手な人だと思います。絵の上手さ、言葉の使い方、コマごとの空気の変え方、キャラクターの表情の一つ一つ、そういったものが重なって、作品世界の中のキャラクターたちにぐぐっと惹きつけられるような感じ。思わず1コマで心を掴まれてしまうような、それくらいの魅力のあるマンガ家だと思います。
そんな感じでサンホラファンなら是非読んでほしい素晴らしい作品でした。さぁ、「Roman」を聴きなおさなくては。