ラノベ部 2巻 / 平坂読

ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)

ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)

ライトノベルを愛するすべての人へ。
ラノベ初心者にラノベの楽しさを伝える小説……のようなふりをして、やっぱりこの小説はラノベ好きによるラノベ好きのためのラノベ好きを描いた小説な気がします。
相変わらずラノベ部の面々の何気ない雑談がメインなのですが、その肩の力の抜けた緩い感じと、あるある全開の会話と行動と、もはや伏字にすらなっていないオタクネタがとても居心地の良い空間を形成しています。このダラっとした感じのどうでもいい雑談のノリは、馴染みのある感じで大変ツボ。ラストのヤロートークにはもはや苦笑するしかないという。あとは、初対面時の腹の探り合いの空中戦のような会話とか、お互いにしか分からないネタで会話成立した時の嬉しさとか、もはやありすぎてどうしよう! みたいな。
そんな身に覚えのある部分と、ファンタジーな部分が適度にブレンドされているのも良い感じ。ただ、変にリアルな部分が多いだけに、現実はそんなに温くないよ! と突っ込みたくなることも。とはいえ、この小説にそんなことを言うのは野暮ってものでしょう。
でも、この居心地の良すぎる感じが逆に気持ち悪いような、毒気がなさすぎて逆に違和感を感じるような。良く知っている部分があるから、逆に受け入れがたい妄想もあるというか、そういうもやもやした感じもあったり。
お話的には、くだらない雑談の合間合間にキャラクター同士の面白い関係性が浮かび上がったりして、そういう面でも面白いです。新キャラクターの留学生リアがラノベ部に入部して、リアと文香の超絶マイペースに、無口な態度の裏で翻弄されている姿が可愛いかったり。そして暦の文香に対する想いが本物過ぎて時々うおっと思ったり。
あとは美咲と竹田の幼馴染話が秀逸。お互いに近すぎて知りすぎているから、こうなるのかと思うと、竹田があまりに切ないです。でもそれは他ではあり得ない絶対の信頼の裏返しなわけで……。うーん、竹田君の新しい恋に期待!
そんな感じになんだかんだで楽しかった1冊。綾の扇子に次に何が書かれるかに密かに期待しつつ、続刊を気楽に待っていたいと思います。