ロウきゅーぶ! / 蒼山サグ

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

「ねー、昴。……勝てそう?」
「――無理だろうな、普通は。……でも、その無理をひっくり返すのが楽しいんじゃねーか」

真っ直ぐさわやかな気持ちの良いスポーツものでした。
てぃんくる絵の表紙に、美少女ゲームっぽいイラスト。そしてインパクト抜群のキャッチコピーに時雨沢恵一の飛ばし過ぎな推薦文と変な方向で話題作な作品ですが、中身はしっかりとバスケもの。確かにロリも要素なんだけど、それだけで売るのは色眼鏡掛かっちゃうからどうなのか。オレンジ100%って書いてあるけど実は野菜ジュース! みたいな。でもこのマーケティングで実際売れてるからなぁとか、いまいち釈然としない思いはとりあえず置いておいて。
バスケット一筋だった少年が、高校入学直後に遭遇する悲運。不祥事を起こしたバスケ部は1年間の休部を命じられ、想いの行き場を失って腐る彼に、小学校教師の叔母が頼んだことは、女子バスケ部の臨時コーチ。丸めこまれるような形でしぶしぶ引き受けた彼だったが、女子バスケ部の少女たちの真っ直ぐな想いに触れて、バスケへの情熱を取り戻していく、という感じのストーリー。
自分の責任ですらない挫折に腐っていた少年昴が子供たちとの交流の中で変わっていく、なんてすばらしい王道! そしてほとんどが素人の集団だった女子バスケ部を、強豪の男子バスケ部との大切なものをかけた対抗試合に勝たせるために、昴は必死に策を考え、部員たちがそれに全力で応える、部活ものの美しさを濃縮したみたいな展開が素敵でした。
小説というよりもテキストっぽい感じの文章はサクサク読めるし、展開も重くなったり暗くなったりしないのでいい意味での軽さがある感じ。ひたすら爽やかで、適度に温くて、でも適度に熱血で、さらに感動させられるという、ある種理想的なバランスのラノベな気がします。
昴の等身大な感じのキャラクターも良いですが、やっぱり真っ直ぐに頑張る少女たちは魅力的。図抜けたバスケの才能を持って、でもバスケへの思いが強すぎるが故に失敗をした過去を持つ智花がこの女バスという場にかける想いの強さ。そしてそれを当たり前のように受け止められる仲間たちの気持ちが素敵。さらにライバルの男バスの男の子らしい生意気さも可愛らしい感じで非常に微笑ましいものがあります。
そして対抗試合のラストシーン、SNSからの流れには思わず感動。
そんな感じで、読んでいて非常に気持ちの良いお話でした。満足!