アカイロ/ロマンス 3巻 薄闇さやかに、箱庭の / 藤原祐

鈴鹿の一族の争いというものは、単なる本家と繁栄派の争いという現在の表面上の対立ではなく、もっと多くの闇を孕んだものであることが示唆された第3巻。
一族から忌まれる家の子として生まれ、心を殺した檻江。鈴鹿の暗役、闇を担う家の娘として育てられ、それ故に何も知らずに本家頭首となった枯葉に歪んだ憎しみをぶつける供子。決して単純ではない、それぞれがそれぞれの事情を抱えて争いあう鈴鹿の一族の闇は、恐らくは鈴鹿の歴史、それも枯葉の親の代で作られた部分が大きそうな感じ。
であればこそ、それを何も知らされずに育てられた枯葉の理想論を振りかざす真っ直ぐさは、その闇を知る者ほど忌々しく感じるのでしょうし、知らないからこそ愚かなほどに純粋であれる枯葉が、この先真実にどう立ち向かっていくのかには不安を感じる部分もあります。
そしてその枯葉の婿候補として、人間ながらに鈴鹿の世界へ飛び込んだ景介のこれから。景介の無力ながらに自らの想いをかけて立ち向かう姿勢と、変に悟っていない等身大の人間らしいエゴイスティックさは非常に親しみやすく好印象ですが、鈴鹿と人間というどうしても相容れない種族の壁と、吉乃と姉の存在という個人的な理由を前にして、景介がどんな決断を下していくのかにもやはり不安を感じる部分があります。
この枯葉と景介の2人が、鈴鹿という一族の抱えたものにどう対峙していけるのかが、この先の大きな見所になるのかなと思った一冊でした。
ただ、このシリーズはどうにもさっぱりしすぎているというか、この作者の前シリーズに合ったような気持ち悪さと表裏一体のカタルシスを感じる部分が少なくてちょっとも足りない感じも。決して地味な訳ではないのですが、少し淡白な感じをうけます。その辺りは、キャラクターも増えたこれからで盛り上がってくることに期待しています。
そして大筋とは関係ありませんが、今回もまたつうれんが大変なことになっていました。前巻のインパクトも凄かったですが、今回も相当びっくり。いったいこの先鈴鹿の宝刀はどうなってしまうのか、期待と不安が入り混じった気分でいっぱいです。