ソードアートオンライン 1 アインクラッド / 川原礫

電撃大賞受賞者の人気web小説を書籍化した作品。
脳へ直接信号を送ることで、完璧なヴァーチャルリアリティ体験を提供する新生代ゲーム機「ナーヴギア」、そしてそれを用いたMMORPGである「ソードアートオンライン」。夢のゲームであるそれは、ゲーム開発者の暴走によって「ログアウトできない」「ゲームの死が現実の死に直結する」ヴァーチャル世界へと変貌を遂げる、みたいな感じで始まる物語。
アインクラッドという世界に取りこまれた1万人のプレイヤーたち。その一人であるキリトを主人公に、ログアウトの条件であるゲームクリアを目指したアインクラッドでの闘い、ギルドを初めとした様々なPC=人との関わり、そしてヒロインであるアスナとの関係を描いた物語です。
ネットゲームの世界と現実の融合のさせ方がものすごく上手い作品だと思いました。5感が取りこまれ外界と隔絶されることで、一つの世界としてのアインクラッドの魅力を見せながら、派手なエフェクトやスキルの概念、ギルドやダンジョンといった要素でネットゲームらしさをきっちりと見せていく感じ。そのおかげで、日常離れしているという意味では遠くて、主人公たちの感覚に対しては遠くない異世界の在り方になっているのは面白いと思いました。
ゲームでの死=現実の死という最初の設定の違和感を感じる部分も、ゲームをプレイしている主人公の感覚が共感できるものなので納得できる形に落ち着いています。
そして物語はまさに王道。特別なスキルを持った主人公に魅力的なヒロイン。フレンドPCにギルドの存在、その中でキリトが何を考え、どういう行動を取っていくのか。すんなりと読める文章で、緩急のある魅力的なストーリー展開を見せてくれてとても面白いです。何より、RPGらしいワクワクドキドキ感と、状況の持つシリアスさが凄く良いバランスで両立している感じ。
ただ、キャラクターの行動にしろ、設定やイベントにしろ、ちょっと都合がよすぎるというか、シリアスな話になっても決して痛みのある話にはならないという、良くも悪くも温い感じがちょっと気持ち悪く感じた部分も。なんというか、絶対に傷つかない居心地の良い妄想という感じがしてしまって、途中から少しさめてしまった部分が少しあったり。
とはいえ、前半から後半まで一気に読ませる魅力のある、非常に質の高いエンターテイメント作品でした。ここからどう続けるのかという気がしなくもありませんが、2巻も楽しみに待っていたいと思います。