異国迷路のクロワーゼ 2巻 / 武田日向

異国迷路のクロワーゼ(2) (角川コミックス ドラゴンJr. 111-3)

異国迷路のクロワーゼ(2) (角川コミックス ドラゴンJr. 111-3)

細かく描き込まれた着物姿のユメの表紙カバーイラストに、手にとって思わずハッとするようなクロワーゼ第2巻。
武田日向の絵は、細かいところまで描きこまれていて、しかもキャラクターの表情や動きは豊かで、その上マンガとしてもコマ割り、見せ方が上手いという本当に凄いレベルのものだと思います。特に、このマンガの中から1コマ1コマを切り取ったとしても、そのままそれぞれがイラストとして見られそうな絵のクオリティは驚愕の次元。
そういう訳で表紙に惹かれた人も買って損はしないと思う作品なのですが、それだけではなく物語の方も実に魅力的です。日本からパリにやってきた少女ユメとフランス人の青年クロードの交流がメインで描かれていて、当時の世相とか文化の違いというよりも、異国の地にやってきた少女と現地の青年という、バックボーンの違う二人が関わり、向かい合い、お互いを知って成長していく、そういう部分に重きが置かれている感じ。
そしてこの巻では、クロードが父親の事故死という過去とどう向き合うのか、かつてカミーユという少女とどう向き合っていたのか、そして今ユメという少女にどう向き合うのかという部分が描かれています。相手のことは深く詮索しないというクロードのスタンスを、自らの出自に縛られる者であったカミーユが「ちょっと残酷」だといった理由。そして現在ユメに対して抱いている想いと関わり方。
2巻のクライマックスに当たる百貨店での出来事は、相手のことを詮索しないことが相手のことを分かろうとしない身勝手さにつながるということをクロードに教えると同時に、彼の中にある父親の影との向き合い方に一つの決着をつける意味合いのあるものだったのかなと思います。逆にユメの方も、異国の地で自分がどう生きていくのか考えて、悩んで、それで一つの答えとしての今があるという感じになっていて、ようやくお互いに向き合って、二人の関係が一歩密になったのかなというところ。この二人のお互いに向ける想いは恋愛感情とはまた少し違うような気がしますが、ここで結ばれつつある絆は読んでいて思わずじんとくるようなとても素敵なものだと思います。
そんな感じで、絵もストーリーもキャラクターも全て魅力的で、愛おしくなるような作品でした。お勧めです。