ラノベ部 3巻 / 平坂読

ラノベ部 3 (MF文庫J ひ 2-18)

ラノベ部 3 (MF文庫J ひ 2-18)

もしあなたが、自分をオタクだと思うならば。
もしあなたが、ライトノベルが好きならば。
もしあなたが、そういうサークルに入っていたことがあるならば。
もしあなたが、そういうサークルに入りたかった過去があるならば。
何も言わずにこの作品を読んでください。
あなたにとって大切な、あなたの大好きな世界がここにあります。


主に部室で高校の軽小説部の面々が喋ったりくだらないことをしたりするだけ、というシリーズも3巻で完結。相変わらず分かれば分かるほど面白いオタクネタやあるあるネタは、より密度を増して数えきれないほどに。そしてもはや元作品の名前を隠そうともせず、だからこそありそうな会話になっていて笑えるような感じです。
でも、この作品の本質はそこではなくて、そういうネタが入ることで出来た、この雰囲気とかノリとかそういうものである気がします。キャラクターたちのちょっとした会話、ふとした行動、そういうものがとても共感できる、よく分かるものであるような気がして、でも確かに理想的なファンタジーとして描かれていて、だからこそこの世界に浸ることが凄く楽しくて、気持ち良いものになっているような感じ。
そして、この居心地の良さは、おそらく作品の根底にある作者の考え方によるものなのだと思います。私たちと同じ時代を生きて、同じようにライトノベルを好み、同じ文化の中にいる作者が、それは楽しいものなんだと、素敵なものなんだと、この作品の世界を通じて高らかに謳っているからこそ、この作品は私のための、そしてライトノベルを愛する私たちのための小説として、今この時に価値を持っているのではないかなと思いました。
そして中身の方も、この巻ではラノベ部のメンバーにラブ方面で色々と動きがあったりと面白かったです。前々からラブ臭を放ちまくっていた文香→竹田→美咲ラインに、リア→竹田が発生したり、実はもっと色々複雑に人間関係が絡んでいたりして大変愉快なことに。
特に、リレー小説や「いかんせん」の国語テストにさんざん笑わされた後に不意打ちでやってきた「儚くも永久のカナシ」→「経験値上昇中」→「プリーズ フリーズ」の流れはニヤニヤが止まりませんでした。中でも「経験値上昇中」の竹田と美咲の会話の破壊力といったらなんというかあぁもう! みたいな。いや、もう、なんか、お前らもう結婚しちゃえ! というか。
ネタの面白さやキャラクター、雰囲気の魅力以外の部分でも、小ネタな掌編の集まりな日常系4コマ手法を小説に持ち込んでいたり、そのこと自体をメタな視点で語ってみたりする自由さがあったりと面白い作品だったと思います。
もっとラノベ部の面々の様子を眺めていたいという思いもありながら、3巻で綺麗にまとまっている素敵な作品でした。ラノベが好きな人は是非。