アカイロ/ロマンス 5巻 枯れて舞え、小夜の椿 / 藤原祐

「でも……だったら、なにかしら? 世界を歪ませているのは」


「愛だ」

急転直下の第5巻。
4巻までは確かに血の匂いのする物語でありながら、どこか抑えたような、少し地味な印象があったシリーズなのですが、ここでこういう展開を見せるのだからそれも納得。
鈴鹿の一族、その悲劇、景介の記憶、枯葉の記憶、型羽の記憶、秋津依紗子の狙い、そしてそれぞれの想い。全ての事象があるべき形に組み合わさり、隠されていた真実が浮かび上がった時に、そこにあったのはまさしく血塗れのロマンスとしか言い表せないものでした。
そもそもどこで何を間違えたのか、それすらも分からないまま走り続ける悲劇は、余りにも身勝手な愛憎の物語。ほんの少しのことがいつしか招いていた事態に打ちのめされるキャラクター達の姿はあまりに悲壮で、絡み合う情念の行きつく先に、明るい未来なんて見えないような状況で。
次が最終巻。何もかもが崩れ落ちたこの状況から、彼ら彼女らが何を想い、何を為すのか、その物語の行方を今はただ待っていたいと思います。