バカとテストと召喚獣 6.5 / 井上堅二

バカとテストと召喚獣 6.5 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 6.5 (ファミ通文庫)

4本中3本が女装ネタでお送りするバカテス短編集。
そしてついに雄二とムッツリーニの女装が書かれたために、メインどころは全員女装済みという何だか良くわからない状態に。あとがきによれば作者が「もっと自由に」と言われた結果らしいですが、この作品は性別の境界に対してフリーダムすぎると思います。
そんな感じの短編集で、1話目は木下姉弟の話。双子の入れ替わり騒動という定番ネタなのですが、姉と弟が入れ替わってこういう展開になるのがとてもバカテス、というか秀吉。完璧に優子を演じているようで、気がつけば優子のイメージを大変残念なことにしてしまっている辺りレベルが高いです。そして始めてきちんと描かれた優子は、いきなり腐女子だったことが判明……って本当に自由だな!
そして2話目、3話目は、いつものメンバー+保護者の令で海水浴へ。ナンパを受ける女性陣とか、逆ナンを受けるムッツリーニに対抗して雄二と明久がナンパに挑戦みたいな話ですが、男女比3:5:1の旅行でナンパを始める辺り何というか、アキヒサフルだなと思いました。そしてその顛末がまたひどいというか、それで騙されるのか!
3話目に入ると夏祭りへと遊びに行く話。そして妙に優しい女性陣の企みは、男性陣を全員女装させて浴衣ミスコンに送り込むこととまた自由な……。そして見事にイラストで描かれている辺り、この作品の方向性がどこを向いているのか不安を感じつつ、ぶっちゃけ明久とかムッツリーニが可愛いのでもうどうしようもありません。この小説はいったいどうなっているんだ……。
そして2話を通じて当たり前のようにアレな扱いを受ける秀吉がだんだん可哀想になってきたり、このメンバーの中で予想外の常識人ぶりを見せる工藤愛子株が私の中で急上昇したり。工藤愛子×ムッツリーニはバカテス内でも今かなり熱いカップリングだと思うのです!
そしてがらっと雰囲気を変えて4話目は雄二と翔子の昔話。友達の少なかった翔子と、神童と呼ばれて周りを見下しているような子供だった雄二。その二人の関係と、ある事件、そしてそこで雄二の取った行動。ギャグ分少なめな思わず温かい気分になれるようなお話で凄く良かったです。この人はこういう話も上手く書けるのかとびっくり。そしてこれを踏まえて翔子の雄二への気持ちを考えれば、今の暴走気味の行動も、愛故にだよねと微笑ましく……微笑ましく……ならないか。
そんな感じでとても自由な短編集でした。ここまで来るとなんかもうどこまでも行って欲しいような気がします!