えでぃっと!! ―ライトノベルの本当の作り方?!― / 箕崎准

えでぃっと! -ライトノベルの本当の作り方?! - (一迅社文庫)

えでぃっと! -ライトノベルの本当の作り方?! - (一迅社文庫)

読むとライトノベルが作りたくなる一冊。
一迅社文庫の大賞を受賞してデビューした高校生作家の羽沢雛太。スランプに落ちいっていた彼のもとに新編集として来たのは、同じく高校生の美少女 片桐文香。そして彼女と共に企画を勧める新シリーズのイラストレイターは同級生の美少女 宝泉院弓佳。さらにアドバイザーで加わってくる幼馴染の陽菜に芸事の神様イツキも加わって、気がついたら広がる雛太ハーレムなラノベ制作現場へようこそ、な感じ。
いつのまにか雛太がモテモテだったり、温泉でのドキドキ企画会議だったり、他にもお約束満載でお届けするハーレムラブコメぶりも何も考えずに楽しく読めるのですが、この作品で良いなと思ったのはみんなで一つの作品を創り上げていくところ。
作家だけが悩んで一つの作品を作っていくのではなく、編集者と二人三脚で企画を温め、イラストレイターとも力を合わせ、色々な人のアドバイスを聞きながらより良い作品を創り上げていく過程は、ともすれば個人作業のように思える小説家の仕事の知らなかった一面を見せてくれました。そして何人かでワイワイやりながら何かを創っていくというその過程そのものが、創作の一つの醍醐味なんだなと。それをこんなに楽しそうに描いているから、思わず自分も何かを創りたくなります。
そしてテーマがテーマだけにマシンガンのように繰り出される業界ネタの嵐。どこまで本当かは当然分からないのですが、なんとなくライトノベルの制作現場や業界の雰囲気が伝わってきて、しかもトレス疑惑や部数の話など生っぽい話がさらっと出てくるから油断なりません。小説を読んでいて、作品だけでもなく作家や業界にも興味があるような人は、色々想像力をかきたてられると思います。ただ、非常にそれっぽいだけに、前半部分だとそのネタがお約束なラブコメ世界とミスマッチしているような座りの悪さも。そして、時々ネタに棘を感じるのは気のせいでしょうか!
そんな感じで面白かったのですが、話的にはまだ雛太の新シリーズが走り出したばかりという印象で、この巻だけだとちょっと物足りなさもありました。ここまではチームで上手くやっていますが、この先文香と雛太が衝突したり、作品そのものに危機が訪れたり、逆にメディアミックスしたりと色々な展開が思い描けるだけに、是非続編が出て欲しいなと思う作品です。