ささみさん@がんばらない / 日日日

ささみさん@がんばらない (ガガガ文庫)

ささみさん@がんばらない (ガガガ文庫)

左イラストのだるそうな少女が表紙でタイトルが「ささみさん@がんばらない」な時点で、できるだけがんばりたくない私のハートにど真ん中ストライクだった一冊。
内容は最近増えてきた掌編が連なった4コマ的なライトノベル。なので、ひきこもりのささみさんと下僕体質なお兄ちゃんと、お隣の3姉妹がくり広げるしょうもないだるだるな日常が繰り広げられる作品なのかと思っていたら、普通に神さまとか世界改変とかささみさんの出自とかシリアスな話がぽろぽろ出てきてびっくりしました。とはいえ、話の規模の大きさ反して重たい話にはならず、日本規模の大事件を半径数メートル以外完全遮断な内向きだるだる空間で描く辺りが不思議な感覚。キャラクターのエキセントリックさやネタの切れっぷりも相当で、ささみさんレポートの中に出てくる

一部のひとにわかりやすく例えると『お兄ちゃん=涼宮ハルヒ』なのである。

のくだりがこの小説の雰囲気をとても良くあらわしているように思います。
大きく分けると3つの話から成る作品ですが、そこに登場するのは冒頭から末期的なひきこもり具合を見せるささみさんに、そのささみさんがツンデレしつつ常時監視をしている下僕体質なお兄ちゃん(いつも顔を隠している)、小学生にしか見えない三十路な長女、大人にしか見えない小学生な三女を有する邪神三姉妹と、どこかネジの飛んだキャラクターばかり。そして彼らが繰り広げる大騒動は、些細なことから街がチョコレートに包まれたり、ネットゲームをやればツッコミどころ満載だったりと、大惨事だけど脱力風味。
そんななんともいえない日常空間を楽しんでいると、八百万な神さまが色々大変だったり、ささみさんの家系が色々大変でささみさん自身も色々大変だったりで、話は思わぬ方向へ。そしてその中で、エキセントリック極まりなかったキャラクターの性格や行動、ハチャメチャだった事件の原因に一つ一つにきっちりと理由がハマっていく辺りには色々びっくり。
そしてそのままささみさんの抱えている問題とか諸々とかに深入りするような深入りしないような微妙に絶妙な感じで物語は走りぬけ、一つ壁を超えたカタルシスがあるようなないようなエンディングへたどり着くという、非常に不思議な作品でした。頑張りすぎちゃってもうだめになっちゃって、頑張らないことを選んだささみさんだけど、やっぱり人間少しは頑張らないといけないよね的な何か……みたいな。
シリアスさと脱力感のバランスが絶妙で、さすがにたくさんのシリーズを手がけている作者だけあって上手いと思います。変だけれど面白いという、不思議な一冊でした。