零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 / 西尾維新

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)

人間シリーズラストを飾る4冊の1冊。
呪い名の集まりである裏切同盟vs零崎人識のバトルが延々と描かれるだけという、ある意味割り切った異能バトル小説。そういう意味ではストーリーは無きに等しいのですが、戯言シリーズ人間シリーズ西尾維新が築いてきたキャラクター、設定、世界観の魅力、そして異能バトルを描く時の西尾維新という作家の斜め上な才能を改めて見せつけられるような小説になっていました。
「闘わずして勝つ」呪い名とのバトルは、殺し名の人識とは予め噛み合わないことが決まっているため、最初から最後まですべて変化球。冷静に考えればそんなバカなと言いたくなるような無茶な設定を強引に通し、それをへ理屈の説得力で納得させてしまうのはさすがとしか言えません。
言葉遊びを弄して読者を煙にまき本質のところは受け流すようでいて、やたらとリーダビリティと中毒性が高い文章。かっ飛び過ぎていて冷めてしまいそうなギリギリのラインを突く異能者たちの設定。そして無茶を無茶のままに正当化するバトルと、西尾維新にしかできない魅力の詰まった小説でした。
戯言シリーズの初期にあったような強烈な感情の流れはここにはないと思います。それでも、フォロワーがたくさん生まれてきた今だからこそ改めて感じる、エンタメ作家としての西尾維新の異端の才能が遺憾なく発揮された一冊でした。残り3冊も楽しみです。