3月のライオン 4 / 羽海野チカ

3月のライオン 4 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 4 (ジェッツコミックス)

「だから オレがやるしかないんだ
 あの段幕 あのままあそこで 煤けさせとくわけには いかないんだよ」

島田八段の棋士としての生き様にただただ圧倒された1冊。
荒れ狂うような風の中、最終的には盤上ではたった一人。当たり前な日常も、ごく普通の幸せも選ばずに、行けども行けどもたどり着かない茨道を歩み続けるA級棋士の生き様。ようやく切符を掴んだ悲願の名人戦宗谷名人という圧倒的な力の前に追い込まれ、持病の胃痛を悪化させながらも、たくさんのものを背負い、己の全てを掛けて盤に向かう島田八段の姿は、客観的に考えたら惨めで、悲壮感の漂うものなのかも知れません。でも、ここに描かれている彼の姿には、「痛々しい」とか「可哀想」とか、そんな安い感傷で軽々しく触れてはいけないと直感させる何かがありました。
追いつめられて迎えた最終局、現実は非情で、それでも彼の放つ気迫は絵の力も相まって、胸の奥に響くようなものがありました。「どうしてそこまで」と思わず問いたくなるくらいに身を削り、それでも闘い続けるその姿は、本当に、本当に格好の良いものだと思います。
そんな島田八段の姿に圧倒され、物語に惹き込まれ、一緒に胃が痛くなるような思いを味わうような一冊でしたが、その中で島田八段の研究会に入り彼に付き従った零の姿も印象的でした。それしかないという理由で将棋を続ける彼に、まさに背中で語った島田八段の姿、そしてトップ棋士である藤本棋竜の言葉、ライバルである二階堂の見せる覚悟。さらに歪んだままの義姉との関係や3姉妹との関係、そして先生との関係の中で、彼が何を想い、何を決意して、そしてどこへ歩んでいくのか。それがますます楽しみになるような第4巻でした。