破小路ねるのと堕天列車事件 / 木戸実験

破小路ねるのと堕天〈だてん〉列車事件 (スマッシュ文庫 き 1-1-1)

破小路ねるのと堕天〈だてん〉列車事件 (スマッシュ文庫 き 1-1-1)

色々なものがごっちゃになって一定方向にはじけたような作品。
妄想過多で些細なことで鼻血を吹く少女、破小路ねるのと付き合い始めた砂島直也が遭遇する不思議な体験。線路から離れた校舎に縦に突き刺さる列車車両。直也の前に現れて電波な設定を語りだす謎のゴスロリちっくツインテール少女。夢のなかに繰り返し現れる砂漠と線路。追いかけてくる2本の足。突拍子もない出来事に幻惑されながら読み進めると明らかになるのは、突拍子も無い出来事を貫いたさらに突拍子も無い真相でした。
「砂男」の小説とそれに対するフロイトの解釈を持ち出しての衒学的な語りや、文芸部員2人と直也による列車事件への強引すぎる推理合戦、魔女っ子バトル物を想起させるコッペリアの闘いに唐突なホラー的展開、まさかのDNAにパラレルワールド。おまけに刑事モノ的な一幕や過剰にラノベ的キャラクターによるラブコメ。ミステリ的な話運びとそれを突き抜ける超設定。それを200ページ足らずの分量に詰め込んで乱暴にシェイクしたような物語なのですが、この何かをこじらせたみたいなジャンク感はとても好みだったり。
ただこういう作品の場合、個人的にはごちゃごちゃした中での加速感とか、その向う側にある作品に込められた思いの強さみたいなものを求めてしまうので、その点ちょっと物足りなさを感じる部分もありました。読んでいて得体の知れないものを感じる面白さはあるけれど、分からないけど何か凄い! みたいな感じはちょっとなかったかなという。
とはいえ、久しぶりにラノベでしかできないけれどラノベとしても変なラノベを読めて良かったです。作者の次回作にも期待しています。