魔法少女リリカルなのは MOVIE 1st THE COMICS 1 / 都築真紀・長谷川光司

映画版を踏まえつつも、ほぼオリジナルな展開となっているコミックス第1巻。
なのはのこの始まりのストーリーについてはTVもあれば映画もあってと何度か語られていて、それをさらに新しく語りなおす中で、今まで掘り下げてきたキャラクターや設定、そして支持されてきた作品の魅力を踏まえた、なのはシリーズの集大成みたいな物語が描かれていると思いました。
映画の展開を下敷きにしてなのはとフェイトの出会いの事件そのものは多くは語らず、事件の中で「友達になれなかった」二人が時空管理局に引き取られたあとでどうやって関係を繋いでいくか、というところに焦点をあてたストーリー。アリサたちとの関係の中でなのはの背景を、リニスの視点からフェイトの背景を少し違った切り口で語り直して、その二人の少女がどうやって友情を築いていくかという感じなのですが、一歩踏み込もうとするなのはと心を閉ざすフェイトの関係は、実に少年マンガ的ライバル関係で良いものだと思いました。
そしてその二人が自分の思いをぶつけ合うのが模擬戦という辺りもなんというかバトル系少年マンガちっく。そしてその模擬戦の描写が、スピード感のある絵の魅力も相まって熱いこと。圧倒的な速さをもったフェイトに対して、まだ魔法を知ったばかりのなのはが天性の才能で踏みとどまる展開。初撃の衝撃もあれば、反撃のディバインバスターもバトルマンガ的なカタルシスに満ちていて非常に良かったです。
それにしても、この作品では9歳の少女という概念はもはや完全に何か別のものに変わっている感じがします。聡くて強くて熱いこのキャラクターたちは、なのはシリーズのたどり着いた、等身大であることは最初からすっぱりと捨てた、新しい魔法少女の形なのかなとも思いました。