多摩湖さんと黄鶏くん / 入間人間

多摩湖さんと黄鶏(かしわ)くん (電撃文庫)

多摩湖さんと黄鶏(かしわ)くん (電撃文庫)

へんたいだ! へんたいがいる!!
入間人間の新作は、頭のちょっと足りない綺麗なお姉さん(変態)と、その恋人の少年(変態)が、脱衣ポーカーやキスババ抜きといったゲームをしながらイチャイチャするだけ、というある意味振り切れた作品。
多摩湖さんと黄鶏くんは徹頭徹尾二人だけの世界に没入して、危ないゲームをしながら暑苦しいくらいにいちゃいちゃとしている訳ですが、そのいちゃいちゃっぷりが何か若干変態的な方向に流れがちなのがこの作品の特徴。いきなり始まる脱衣ポーカーはかけるものがなくなればお互いの恥ずかしい秘密を掛けて勝負が続き、キスババ抜きでは眼球舐めにワンピースたくし上げに黄鶏くんの脇フェチ開花。さらにはお互いの幼少期の写真を向かい合ったまま眺めてニヤニヤするとか、二人きりで旅行に行って王様ゲームもどきな花札を遊んでみたりとか色々大変。そのくせまだキスもしたことがないとか何その間違った方向に進化した変態バカップル、という感じです。作品としては、具体的な描写は少し外して、どちらかというと恥ずかしさに焦点を当てているようで、それがまたうひゃあというかなんというか。
そしてそのオリジナルゲームを徹夜して考えてくるのが多摩湖さんというのがなんというかまた絶妙。見た目は綺麗系のお姉さんなのに、どこか足りなくて現在高校3留中というのも入間作品らしい社会不適合っぷり。そんな多摩湖さんに引きずられたのか、黄鶏くんの方も話が進むごとに変態の才能が花開いて、後半は多摩湖さんの方が引くくらいの高いポテンシャルを発揮していました。その上で世界中でもうお互いしか見えてないというのはどれだけダメ人間カップルなのかと。この辺りの世間離れしたダウナー感と左イラストのちょっと病んだ雰囲気が、作品の独特の空気をつくっていて面白かったです。それにしても、二人共もはやクラスに居場所なさそう……。
頭の悪い変態二人のいちゃいちゃ掛け合いが延々と続く本作ですが、なんだかんだでそれを支えているのは、お互いのどんな変態度合いさえ愛せてしまう盲目な愛なのだと思います。このお互いがお互いに依存するような閉じた関係のあり方は、どこかみーまーっぽくて、作者らしい部分なのかなと思いました。
そんな感じに入間人間の新しい引き出しを間違って開いちゃいました的一冊。大変面白かったですが、1冊読み終わるとなんだかもうお腹いっぱい感もあります。二人で勝手に幸せになってればいい!