ゆびさきミルクティー 10 / 宮野ともちか

ゆびさきミルクティー 10 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー 10 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー最終巻。
ひだりと水面の間であっちにふらふらこっちにふらふら、その上自分自身であるユキにもふらふらと散々揺れ続けた由紀がようやく決断をして、その後はもうなんというか砂糖を吐きそうなラブラブエッチなお話が、このシリーズらしい透明感と変態さを兼ね備えた展開と共に延々と続きます。このあたりのピュアでセンチメンタルな皮を被った変態性、みたいなものはさすがという感じ。
そして、今まで迷った分まで段階を一段飛ばしで埋めていくように距離感を詰めていく二人で、もう一人へのフォローが全く無いというのはさておきとりあえずはハッピーエンドへ向かっていたのですが、最後の由紀の行動でなんというかまあ。


それで、以下少しネタバレです。


由紀が自身の女装姿であるユキの中に求めていたものはきっと、彼の理想の少女性みたいなもので、それを満たすこととナルシズムが一体になったような女装趣味が続いていた反面、自分が男であることそして成長していくことに対して逃れがたい部分もあって。そういう迷いの中でふらつき続けていた由紀が、一人の少女を選ぶことでようやくそこを抜けだして、世界との折り合いをつけられる、はずなのですが、結局男である自分に流された彼が捨てたユキという少女性を、結局はひだりに求めるだけの形で終わるというのは、もうなんというか最低だとしか。
成長は喪失を伴う、というのは作者も語っているこの作品の一つのテーマではあるのですが、成長を止めようと思っても時が流れ続ける限り、必ず人は折り合いをつけなければならないものという話はあるわけで。ピーターパンシンドロームちっくな状態を引きずり続けて、自分が失ったものをひだりの中に見て、それを失いたくないからひだりに「成長なんてするな」と言うのは、完全に自分のことしか考えてない最悪の言葉。この先も由紀の心が囚われ続けるのならば、彼はきっとユキを失い、ひだりを失い、その先でも失い続けながら、自分の中に原体験として存在する理想の少女性を求め続けていくのだろうなと、そんなことを思いました。
もちろん、それはそれで由紀という人のあり方なのですが、個人的にはやっぱりそこは線引きをして、折り合いをつけて、ひだりと二人並んで歩んでいく姿を、ラストシーンでは見たかったなと思います。理解を超える部分も多い半面、共感できる部分も色いろある物語だったからこそ、最後には少し何か一つでも答えを見つけて欲しかったなと思うのです。