ACONY 3 / 冬目景

ACONY(3) <完> (アフタヌーンKC)

ACONY(3) <完> (アフタヌーンKC)

アコニーの母の謎や基海の決心もありつつ、いつもながらに化け物アパートの日常が繰り広げられる最終巻。
アパートでのドタバタコメディであればもっといくらでも続けられたような気もするのですが、思いの外あっさりと終わったシリーズでした。人ならざる者が跋扈する時間の止まったようなおんぼろアパートでの非日常めいた楽しい毎日。その終わらないユートピア的空間を、基海は現実的な判断であっさりと離れていきます。それは子供時代との決別と成長だとか、そういうテーマでもあるとは思うのですが、そこを重く描くことはなく凄く自然体だったのがこの作品らしい肩の力の抜け方かなと。
時間の止まったアパートの象徴のようなアコニーという少女が、ゆっくりとだけど成長すること、基海の成長を生涯の別れと捉えるアコニーに対して、いつでも帰ってこれると基海が考えていること。別れは別れで成長は成長で、でもそれもそんなに決定的なことはないでしょうというようなさっぱりとまとまった結末が、個人的にはとても好印象でした。
日常のドタバタ騒ぎも相変わらずどこかダウナーなのに賑やかという居心地のいい空気があって楽しいです。明らかに普通じゃない出来事が頻発しているのに、みんな自然体なのがそういう空気を生んでいるような印象。今回の話の中では、気がついたら怪獣大決戦が始まっていた「しーちゃんのペット」が面白かったです。これはビオ○ンテだよなぁと思っていたら、作中でも言及されて思わず吹き出したり。
そして相変わらずアコニーが可愛いです。とても可愛いです。重たい過去があっておかしな環境で育って、その上で飾らないナチュラルな性格をしているのが良いのかなとか。もしいつか、アコニーが本当に16歳くらいの姿になって、基海が20代になってここに帰ってきたのなら、2人には結ばれて欲しいなぁとぼんやり思ったシリーズでした。
なにはともあれ、もう出ることはないんじゃないかと思っていた単行本がちゃんと出て、しかも巻数を重ねて完結までたどり着いたことに、ファンとしては胸がいっぱいです!