ベン・トー 6 和栗おこわ弁当310円 / アサウラ

佐藤にとって未開拓だったビッグ・マムのスーパーを舞台にした弁当争奪戦、烏田高校の文化祭開催、そしてそれに併せた槍水先輩の妹茉莉花の来訪という3つの話が絡みあう第6巻。
子犬のように姉に懐いている茉莉花が、その姉や姉が楽しそうに語るHP同好会の面々に憧れてスーパーに足を踏み入れ、そして姉が負けたきりで撤退したビッグ・マムのスーパーへと敵討ちに行く。もちろんそんなに上手く行くはずはないのですが、仲の良い姉妹の間の微妙なすれ違いぶりと、そこまでにあったそれをすべて吹き飛ばすようなラストの展開が熱かったです。茉莉花に取って仙はとびきりのヒーローで、そしてヒーローらしさを存分に見せてくれればそれはもう。
ただ、そんな弁当争奪戦は今回はちょっと小粒だった印象。ガリー・トロットこと山木柚子の残念な子具合や、どう読んでもマツコ・デラックスでイメージ映像が脳内再生されるビッグ・マムの存在感は良かったと思いますが、今回はそれ以上に文化祭メインだったのかなという印象がありました。
その文化祭は多くのキャラが登場して意外な一面を見せたりと賑やかで楽しそうな感じでした。やたらと食べ物がクローズアップされるのもこの作品らしいところ。そして、そんな賑やかな雰囲気の中で、作者の斜め上の発想がいつも以上に冴え渡っていたように思います。相変わらず高い文章力で、どうしてそうなった的な佐藤の変態思考を延々と描写したり、そのままセガ愛の彼岸へと旅立っていってしまったり、残念すぎる佐藤フレンズの描写が突然差し挟まれたり。そして大真面目に頭がおかしいはずなのに、その文章を読むだけで面白いというのがさすがという感じ。
特に今回は、ますますキレをましていく白粉先生の「弓と肉棒のオートマチック判定システム」や、スーパーで佐藤たちと闘う狼である坊主のその手で来たか的なコスプレ飲食店、さらに茉莉花を寮の部屋に連れ込んだ佐藤の知らぬところで展開される、ロリコンの霧島君vs心霊研の世界の平和をかけた大いなる闘いなどなど、いったいどこからそんな発想が出てくるのかというネタが目白押しで、非常に面白かったです。でも、白粉は5.5巻の短編を読んだせいか、劇の脚本という大役に挑んで、譲れない気持ちも見せてくれて、創作者として一歩を踏み出してきた感じが良かったです。とてもアレな子ではありますが、不思議と応援したくなるようなキャラクターだと思います。
そんな感じで、前巻の短編集に引き続きいつもと少し違う面白さもあって、これはこれでよかったなと思える1冊でした。いつかこの作者の100%ギャグ小説を読んでみたいような気がしなくもない……かも。