羽月莉音の帝国 4 / 至道流星

羽月莉音の帝国 4 (ガガガ文庫)

羽月莉音の帝国 4 (ガガガ文庫)

ブレーキなんて必要ないとばかりに、どんどんスケールを大きくしながら革命の物語は駆け抜けていきます。
新しい国を作るには強力な軍事力が不可欠→核兵器の保有が必須→国際情勢もあり原子力開発は困難→原子力企業世界一のウェスタンユニオン買収が必要→親会社の超巨大総合電機メーカーEEへのTOBを仕掛けるという一足飛びで無茶な展開を勢いで読ませるのはさすがという感じ。ビジネスから政治からヤクザの世界まで含めて、今までにもまして一大スケールのホラ話をスピード感と高いテンションを維持したまま描いてくれるので、読んでいて爽快感がありました。
そんな感じでEE買収を仕掛けた革命部は、何者かのマスコミへの介入が感じられる世論操作で予想外の大バッシングを浴びる苦境に。情報戦では完全に劣勢に立ちながらも、EEに揺さぶりをかけウェスタンユニオンの買収での決着を目指す革命部という形になるのですが、政界、財界、裏社会に強烈な影響力を持った右翼の大物が登場してくる展開は斜め上。そこからのご都合主義的な解決はさすがに突っ込みどころ満載過ぎる気もしますが、理想と信念と仲間との絆ですべてをひっくり返した大立ち回りはエンターテイメントとしては非常に気持ちの良いもの。
そしてそこからはさらに事業の急拡大に伴なう資金繰りの悪化に苦しむ革命部が銀行創設を目指すという展開が待ち受けるわけですが、そんなことより右翼の大物のこと海胴総次郎の極端なまでのツンデレっぷりが印象的。莉音のことを認めてからの態度には、なんだかもう笑っちゃうようなものがありました。これはまた強烈なキャラクターが出てたという感じ。
それから、革命部の中での関係が変わってきたのも見所かなと。最初は本当に別次元の超人的存在だった莉音の弱さや迷いも見えてきて、その分それを支える巳継の揺らがない大物っぷりが表に出てきたのは、前巻に引き続き莉音に引っ張られるばかりだった革命部からの変化が見えている感じ。そしてその流れの中でクローズアップされてくるのは、事務処理はできるものの発言内容に大問題のある恒太の処遇で、確かにどうするのだろうと思いながら読んでいたのですが、まさかこういう事になるとはという驚愕の引き。これまでも斜め上の展開を見せてくれてきたシリーズではありますが、さすがにこれは一体どうするのだろうと次の巻が楽しみです。