- 作者: 入間人間,宇木敦哉
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2010/11
- メディア: 単行本
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「友達」って何なのか。むしろそれは考えたら負けなのではないかと思えるそんな問いを胸に、今日も孤独なキャンパスライフを送る語り手達。彼ら彼女らが謎の保険医から与えられる鍵は、大学のボロい講義棟にある窓もない酢飯スメルの密閉空間「秘密基地」のもの。物語は5人の語り部と秘密基地の創世記によって織り成されて、それぞれの物語の中に墓場に野球にレンコンお化けにクレープ屋といったキーワードが現れます。
独りぼっちな語り手たちの物語は当然華やかでもなければ特別なことも起こらず、内向きにうだうだと悩んでみたり、出会ってしまった「友達ではない」変な奴と話していたり、秘密基地に引きこもってみたり。ただ、そんな彼ら彼女らがもたらした行動が時間を超え人を超えて、小さな波紋が少しづつ広がっていくかのようにして、最後に生まれるのはご都合主義極まりない、けれどちっぽけな奇跡。個人主義で社会不適合なはみ出し者たちが、友達にはなれないままに隣り合ってなんとなく打ち上げるしょぼくれた花火のようなそれは、全然大したことじゃないのに、なんとなくそれはそれで全部OKみたいな気分にさせてくれる不思議な緩さがありました。この全然ダメだけどとりあえず全部大丈夫的な感覚はすごく好みです。
キャラクターたちは揃いも揃って一癖ある、言ってしまえばめんどくさそうな奴らばかり。そんな彼らの繰り広げる珍妙な物語はそれはそれで楽しくもあるのですが、他人に対して一線を引いている奴らばかりのために、やっぱりドラマ的にはちょっと辛いものがあるような気も。入間人間という作家は、感覚を描くのが抜群に上手い人だと思っていて、そういう意味ではこの作品のぼっちたちの内面描写やちょっとしたことで感じる居場所の無さは、分かる人には凄く分かるものだとは思うのですが、個人的には分からなくはないけれどいまいちピンと来ない部分もあって、それがなんども繰り返されていくと冗長に感じる部分もありました。これまでの作品よりも分量が多く、なかなか全体を通じたものが見えてこないというのも、そう感じる要因かもしれません。
そんな感じで個人的には、もう少し何か動きが欲しかったかなと思いましたが、読み終わった後になんだか気持ちの軽くなる、作者らしい青春群像劇だったと思います。そして、独りぼっちが何人集まっても、友達にはならないで独りぼっちたちになるのだという言葉には凄く納得!