3月のライオン 5 / 羽海野チカ

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)

敗れた島田八段の里帰り。学校での零の立ち位置。宗谷対隈倉の名人戦。香子と後藤の関係。そして、ひなのクラスでのいじめ。年齢も性別も立場も違う人々が、それでもこの作品の中でそれぞれに生きているという実感。こんなにも感情の見えるマンガはなかなか無いと思います。
ある面から見える人の姿がその人の全てではなく、色々な顔があり、色々な関係があり、色々な想いがあり、そうして一人の人間の輪郭を持っていく。桐山零という主人公を中心に、将棋の世界、川本家、学校を舞台にして、重なりながら描かれていく人々の物語には、本当に強い感情の流れがあって、読んでいて何度も目頭が熱くなりました。
そんなたくさんの人との関係の中、幸せなことばかりではなく、不幸せなことばかりでもない世界の中で、将棋しか無かったから将棋の世界を目指した少年が、どう変わっていくのか。少しづつ変化はあって、でも彼はまだ何も見つけられてはいなくて、それでもこの先の彼ら彼女らの行く道に光があることを祈りたくなるような作品です。この巻も素晴らしかったです。