シアター! 2 / 有川浩

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

シアターフラッグ内の人間関係を描いた短編と、次の公演への助走といった感じの2巻。
人間模様が描かれた4つの短編は、どれもキャラクターがいきいきと動いている感じがして面白かったです。1巻では描ききれなかった、団員それぞれの想いや関係、そして意外な一面までが視点を変えて描かれていくのが新鮮で、この人はこういう人だったのか! 的な驚きがあったり。意外なところでケンカになったり、そのフォローに誰が動くのかだったり、そこが結ばれるのかという恋模様だったりと、本当に面白いと思います。
そのなかでも個人的に良かったのは、牧子と千歳の関係。千歳に対して色々複雑な想いを抱えながらも、役者としての強烈な自負と、そこに役者として真向から挑んでくる千歳に対して見せる態度。ある意味歪んでいるとも言えるほどの芝居に対する想いの強さが、二人の間にある濁った感情すべてを超えて、役者としてライバルにしてある意味戦友的な立ち位置にこの二人を置くその瞬間がとても好きです。あとは、スズと千歳の大げんかが色々身につまされるものが……。
そしてその中で感じるのは、シアターフラッグ劇団員たちの意識の変化。サークルのノリで続けて、赤字が膨らんで潰れそうだった劇団が、ビジネスの論理をもった司が介入して何とか踏みとどまったことで、この劇団をどうしていきたいか、どう運営していきたいかという意識、これでやって行くからにはただ楽しければいいじゃないんだという意識が芽生え始めたのは、読者としても喜ばしいことに感じます。逆に、ビジネス的な発想で劇団と関わる司は、雇用関係のない劇団という組織で、それでも団員たちが必死で劇団を支えようとするところを見て、しきりに不思議がりながらも、自分自身も少しづつのその熱にのまれていっている感じ。元演劇青年の上司に相談を持ちかける辺りでは、無自覚にのめり込んでいるなぁとニヤニヤできます。このお金周りの現実感覚と、演劇に対する熱意。同好会ではなく、プロの劇団としてこれからシアターフラッグがやっていくためにはこの両輪が必要となってくると思うだけに、その両極端にいる司と劇団員たちが、こうやって少しづつ歩み寄っていく過程は見ていて良いものだと思いました。
そんな感じでキャラクターはいきいきと動き、予想のつかないスピード感のある展開で、憎まれ役はどこまでも憎まれ役で、キャラクターそれぞれに見せ場は回ってくるという、とてもエンターテイメントした一冊でした。ただ、一歩線を踏み超えたような生の感情が、それが全て正しいもののようにぶつけられるような瞬間があって、そういう部分はちょっと苦手だったりも。
とはいえ、非常に面白い作品であることは確かなので、恐らく最終巻という3巻も楽しみに待っていたいと思います。個人的には、司のミスをあのシアターフラッグの面々がフォローするというような展開が見たい!