ベン・トー 7 真・和風ロールキャベツ弁当280円 / アサウラ

修学旅行で槍水仙が不在の中、HP同好会の部室に現れた元HP部の卒業生烏頭みこと。つかめない彼女の行動に佐藤は翻弄され……というストーリーの7巻なのですが、読み終わって印象に残るのが白粉大先生の話と佐藤の過去話であるというこの不思議。
特によくよく考えれば本編にあまり関係ないんじゃないかという1章のかっとばし方はいつも以上。ガンコナーこと山之内と佐藤がスーパーで繰り広げるゲイ芝居、金欠で食べるもののない佐藤に太くて棒状のものを加えさせて興奮する白粉、真昼間のスーパーでアレな言葉を叫ぶオルトロス姉と「変態」は佐藤だけじゃないんじゃないかと思わせるような状態。
佐藤の過去話に目を移せば、革命家の三沢君による、置き勉禁止に端を発して男子児童たちが陸軍リュックで投稿をするに至った「三沢の乱」、修学旅行で直下に位置する女子の部屋を目指して壁をラペリング降下するという一大作戦、そして現在進行形の「プロジェクト・デスティニー」まで、大マジなのにどう考えても頭のおかしいネタのオンパレード。
この濃さと暑苦しさと頭のおかしさがこの作者の特徴と言ってしまえばそうなのですが、ページを埋め尽くさんばかりの文字密度で繰り出されるそれは、摂取しすぎると胸焼けしそうな感じでもあります。とはいえ、この独特のネタが魅力でもあるのですが。
そして本編の方は、「ウルフズベイン」烏頭みことの仕掛けた毒に佐藤と白粉がものの見事にハマり、スーパーを完全制圧されそうになるという展開。何を考えているか読めないけれど、とにかく佐藤たちのことは見下している感のある烏頭の描写は、読んでいるとかなりイライラさせられるものなのですが、話が進むに連れ彼女がどうしてそういう行動を、このタイミングでとったのかが分かってくると憎めなくなってくるのが良かったです。人を陥れ自分は無理をしてでも掴みたかったもの、それがダメだったとしても、隣にいる人がいるというのがまた。
そして佐藤の方は周りに助けられるような話。とはいえ、単純に助けられるのではなく、異物である烏頭を排除するために、顔なじみの狼たちがあくまで狼として手を貸していくような流れ。そして全てを吹っ切って決戦の場に立った佐藤の姿、それを後押ししたオルトロスの言葉は熱かったです。こういう熱さがやっぱりこの作品の魅力なんだと思いました。
HP部の過去、その因縁もちらっと見えてきて、この先槍水先輩が帰ってきてからどういう話となっていくのか楽しみな7巻でした。
そして白粉大先生はウルフズベインの毒により締め切り間近の執筆が滞り、本筋とは全く関係なく立ち直り、クライマックスシーンにはやはり執筆のため登場しなかった辺りある意味凄かった……。