電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 / 入間人間

電波女と青春男の1巻リメイク的な内容の一冊。
大きな変化としては、丹羽くんの1人称だったものが3人称の文章に変更されていて、より宇宙人の見守る街での物語という雰囲気になっています。もちろん丹羽くん一人称はこのシリーズの大きな特徴ではありましたが、街の中でそれぞれのキャラクターが特別だけどなんてことのない日常を暮らしていく作品だと思うので、こういう文章もまたありかなと感じました。
話的には、細かいイベントはかなり変わっていて、でも作品の芯のところは変わっていないという印象。ただ、エリオの性格や女々さんとエリオの関係はかなりマイルドになっている感じもあります。それでも、宇宙人でスマキンなエリオを丹羽くんが地球人にするというその軸はブレることなく。
この作品は宇宙人的なものを否定しているわけではなく、それは本編のほうでのリトルスマキンの描き方や、ヤシロの登場するこの巻で示唆される本編に対する位置付けからも分かります。でも、もし万が一エリオが宇宙人であったとしても、きっとこれはそんなことで変わることはなく、作中でも語られる通りに、エリオを地球人にしてしまう物語になるのではないかと思います。それが良いとか悪いとか、正しいとか間違っているとかではなく、矛盾は矛盾のまま行動と感情はそこにあって、何かが連綿と続いていくような感覚。その中でエリオのあんな表情が見られた本編があるなら、丹羽くんに取ってそれは真実で、やっぱりこの行動は特別なものだったと感じるのです。
だから、エリオがどこへ消えて何故記憶を失っていたのかも、エリオットが何者であるのかも、ヤシロの担っていた役割も、リトルスマキンの正体も、全ては語られないまま。そして語られなくても、この宇宙人の見守る街の中で、人はそれぞれの想いを抱いて、行動して影響しあって、そして生きていくのだと改めて感じたSF(すこしふしぎ)版でした。
正直なんでまたリメイク版をという気持ちと、本編1巻への思い入れがなかなか素直に楽しませてくれない一冊ではあったのですが、電波女と青春男というシリーズらしい番外編というか、別で同じな物語だったと思います。