- 作者: 城平京
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/05/10
- メディア: 新書
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見た目中学生でクリーム色のベレー帽を被り取っ手が子猫の赤色ステッキを持つ、一眼一足の美少女が登場するやいなや変人ぶりを遺憾なく発揮した辺りで、城平京作品だなと思わされた冒頭。そこから展開する物語は、怪異は存在するという大前提を元に、怪異は存在しないという真実を掴みとるという逆転の発想的なものでした。
そもそも、主人公コンビである岩永と九郎からして怪異側の立ち位置にいながら、取り組むのは実在している怪異である鋼人七瀬を消し去ることというのだから不思議な感じ。そしてこの作品のキモ的な部分はその怪異の設定で、人が確からしいと信じることによって存在するということ。つまり真っ当な自然法則に大多数の思い込みが勝るというのだから、その世界で真実をどうにかしたければ、人心をいかに掴むかというところに行き当たります。そして、その真実を創るための戦いの場が、この作品の場合はネット上にあるというのが現代的といえば現代的。かくしてネットワークの向こう側に居る多数の人間を民衆とした、鋼人七瀬は実在するのか論戦は幕を開けるというわけです。
普通のミステリであれば、真実を明らかにする、事件を解決するといった話になるところが、真実のほうが揺らいでいるものだから如何にそれを確からしいと思わせるかがポイントという変な話。ネタバレになってしまうので細かいところは語りませんが、虚実が入り交じりながら論理と創作が真実の形を勢いよく変えていく辺りは圧巻ではありました。
ただ、そこが面白さだというのも分かりつつ、個人的にはちょっとくどいというか、もはや屁理屈に近いものが乱舞しているのが読んでいて辛いところもあったり。この辺りは人によってはむしろそれが楽しくて仕方がないという感じになるのも分かるので、人を選ぶというところなのかも知れません。
あとは、九郎の現恋人の変人な岩永と以前の恋人の真っ当な警察官の沙季さん。この3人の人間関係だったりやりとりだったりも面白かったです。中でも、芯が強く強引で普通の人とは発想がズレつつお嬢様なのに時々直球下ネタを投げ込む岩永のキャラクターの強烈さはとても印象的。話的にはまだまだ続いていきそうな感じではあるので、またこのキャラクターたちが活躍する話も読んでみたいなと思う一冊でした。