涼宮ハルヒの驚愕 上・下 / 谷川流

もうとにかく出たということがひとつの事件な感もある驚愕。思えば、分裂を読んでこれはこのまま続くのかと思ってから早四年という歳月が……。
という訳で、読み始める前にはとにもかくにも感慨深さが先立っていたのですが、読み始めたらそれ以上に中身の面白さで楽しませてくれました。回りくどく饒舌で、でもリズム感のあって読みやすいキョンの一人称は、あぁ今ハルヒを読んでいると感じさせてくれるもの。そして超常設定大盤振る舞い感も、クセのあるキャラクターたちも相変わらずの面白さでした。
二つに「分裂」した世界が交互に描かれていく形で進む物語は、平和に新入部員試験をやっているα世界と、長門が倒れ九曜や藤原によって窮地に立たされるβ世界という両極端な話に翻弄されるような感じ。そしてどちらかと言えば、キョンが何とかしようともがいて追い詰められていくβ世界の方が気になるかなと思ってからの終盤が、まさに驚愕のオンパレードな展開でした。分裂した世界の全てが繋がっていく辺りを、未来人宇宙人の語りでけむにまくようにして語っていく力技加減がやっぱりハルヒな感じで面白かったです。
そしてこの話の中で一番印象に残ったのは、終盤の古泉の姿。SOS団がどんなに代えがたく、分かちがたく、それぞれにとって大切なものになったのかがくどいくらいに語られ続けたこの物語を象徴するような、普段飄々として何事もサラッと流す古泉の豹変ぶりに痺れました。こういうキャラに、ああいうことを言われてしまっては、それはもうグッと来るしかないじゃないかという。
そしてキョンもまた以前の無気力はどこへやら、入れ込みすぎじゃないかと思うくらいにSOS団を守るために奔走する様子は、さすがに頭に血が上り過ぎじゃないかと思うくらい。そしてパワーはそのままに色々と丸くなった感のあるハルヒの変化も、この集まりがあったからこそなのかと思えば、なんだか感慨深いものがあります。ただ、さすがにちょっと過剰なまでのものは感じるので、この先何かしっぺ返し的な話がきてもおかしくないのかなと思ったりもしたり。
そして、クライマックスではどんどんと移り変わっていくシーンの畳み掛け。特に、数年後の二人の姿はちょっとこれはずるいんじゃないかというくらいに、色々妄想の広まる素敵な未来を見せてもらえました。そこに立て続けにまさに「驚愕」というシーンが来るあたりは、あざとさすら感じつつもぐっとくるものでした。
そんな感じで久々に読んでもハルヒハルヒで面白いと思わせてくれる一冊でした。なんだか色々と過剰だった分、この先どうなっていくのかと思うところもありつつ、続きが出ることを気長に待っていようと思います。