ゴールデンタイム 3 仮面舞踏会 / 竹宮ゆゆこ

晴れて恋人どうしになった万里と香子ですが、ところ構わずラブラブバカップルしつつも何もかもがそうそうシンプルに行くはずもなく。完璧でも聖人でもない大学生の人間模様が交錯するお話になっています。
千波におもいっきり振られた柳澤のめんどくさいまでの引き摺り方も、千波は千波で関わるなと言われると微妙な態度をとってみせるところも、今の万里にとっての香子と記憶を失う前の万里にとってのリンダ、そしていまのリンダ先輩という微妙な関係の中で揺れる万里も、本当にただの大学生という感じ。
不安定でちょっとした事で揺れるし迷うし、達観もできないし大人になりきれない、そんな等身大の二十歳手前の男女たち。そんな傷つきやすくもエネルギーに溢れた若者たちが狭い距離感で一緒にいればそれはもういろいろとある訳で。そしてそんな彼ら彼女らの可愛らしさも馬鹿さ加減も面倒くささも全部含めて、微妙な空気感とか心の動きが描いてあるのはさすがだと思いました。たとえこんな大学生活を送っていないとしても、あの頃に感じたこの大学生としか呼びようのない空気感みたいなものは、きっといろいろな人に共通して分かるものなんじゃないかなと思います。
ただ、それが読んでいて楽しいかというと人によるかなとも。ああこれぞ大学生と思いつつも、こんなひたすらに面倒くさい人間関係はできれば避けたいなと思ってしまう私のような人にとっては、リアリティがあるだけにちょっと引いてしまうところがある一冊でもありました。単純な話、私がこれをフィクションと割り切って楽しめるほど遠ざけられていない、20代後半という微妙な年頃だというだけなのかも知れませんが!