なれる!SE 5 ステップ・バイ・ステップ? カスタマーエンジニア / 夏海公司

萌えるSE残酷物語というキャッチコピーがまさにという感じのシリーズ第5巻。相変わらずSI業界の話とラノベ的な物語のバランスが良くて面白いです。
今回はカスタマーエンジニア編ということで、飛び込み炎上案件に巻き込まれて、機器設置に日本各地を飛び回るというお話。現地についてみれば入館の申請が下りていないとか、設置図と現地の状態が全然違うとか、配送されていた機材が間違っているとか、お客様に後ろの予定があって時間がないとか、なんというか嫌な感じに想像のつくトラブル多発で振り回される様子は、思わずうわあと思ってしまうようなもの。ただ、今回は役立たずな上流ベンダの担当者も役立たずなりに頑張ってはくれていたり、お客様も強面でも現地作業員には割と優しかったりで、思ったほど胃に悪い展開ではありませんでした。むしろ大したことなかったじゃないかと思ってしまうくらい胃に悪い展開が当たり前のラノベというのもどうかと思いますが! ラストの解決は相変わらずの強引な手で、やっぱりこの人達は根は会社員というより職人系なんだなと。会社員的には恐くてあんなことできません。本当に。
そしてそんな展開の中でもフォーカスされたのは工兵と室見の関係、そして室見立華という人物について。緊急の立会に電車トラブルで浜松から帰れなくなった工兵と室見が、仕方なく工兵の実家に泊まるという一足飛びな展開があったのですが、そこで見せる室見の普段とは違う顔、そして工兵の妹が語る「からっぽ」という室見の印象に、この人はどういう人なのだろうと興味を惹かれる感じ。職人気質の凄腕技術者としての矜持、時折見せる大人びた対応に上司としての顔、ツナ好きでわがままな子どもっぽい性格、荒れるキレるな激しい気性、そして立ち入らせないプライベートとその向こう側に見える薄ら寒い虚無。てんでバラバラの要素が、1つになって形作られるピーキーなこと極まりないキャラクター。そんな彼女が、工兵との関わりを通じて強さも弱さも含めていろいろな表情を見せ、その向こう側の本心がちらつくというのは、実に王道。巻を重ねるごとに縮まる距離と、見えてくるバックボーンがとても良いものです。そして相変わらず私はこの室見立華というキャラクターが好きすぎます。
ちなみに表紙にもなっている梢さんはますますストーカー的素質を開花させて大変怖いことになっているのですが、それはそれとしても可愛く描かれているのでこれで良い……のか。出張先の大阪で完全スタンバイ&ここの作業だけスムーズでデート準備完璧とかいったい何したんだこの人という。それにしても、例によって鈍感な工兵を巡るこの先の修羅場が心配でなりません。ただ、むしろ完全にワーカホリックと化している工兵の体のほうが心配な気がしなくもありませんが!
DNSDHCPARPにパケットキャプチャとネットワーク入門書な単語が飛び交う内容も相変わらずで、分からない人でも面白く、分かる人にはもっと面白いような一冊。このシリーズはやっぱりとても好みです。