ビブリア古書堂の事件手帖 2 〜栞子さんと謎めく日常〜 / 三上延

気がつけばメディアワークス文庫を代表する人気シリーズとなっていたビブリア古書堂の2巻。
本が読めない主人公の五浦と、ビブリア古書堂の店主で本の虫である栞子さんが、古書にまつわる謎を解いていく3つの話と、その中から浮かんでくる栞子さんの家族、特に母親の話が描かれていきます。
相変わらず、落ち着いてしっとりした雰囲気が読んでいてとても心地良い、上品な小料理のような作品でした。北鎌倉の古書店という舞台に、栞子さんのキャラクターを含めて、この作品の空気というものがある感じ。文章も非常にさらさらと読みやすくて、この空気感に浸るだけでも十分に楽しめる一冊だと思います。
事件の方は、相変わらず普段は引っ込み思案な栞子さんの本に関する話になった時の積極性と鋭さに驚かされるような感じ。けれどその解かれる謎は決して後味の良いことばかりだとは限らなくて、それでも突っ込んでいってしまう栞子さんの危うさもあって。この辺りは、シリーズ通して大きな謎になってきそうな栞子さんと母親を巡る話とあわせて、栞子さん自身の、そしてそれは彼女と向き合う五浦にとっての大きなテーマになってくるのだろうと思います。1巻でも見せた、本のためならなんだってしてしまう危うさ、自分自身の中のそれを自覚して、自分そっくりだった母親に対して何を想うのか、みたいな。
キャラクター的には栞子さんが相変わらず魅力的です。普段はおどおどした感じでも本のことになれば途端に活き活きとするギャップ、どこか世間ずれした雰囲気に、表立っては出さなくても五浦と一緒にいることを楽しみにしている様子と、色々狙い撃ちな感じの素敵さ。そして、そんな彼女とどちらかと言えば物静かで口下手で、無骨に誠実な性格の五浦の、どこか不器用な関係がまた良いもの。この二人がこの先どうなっていくのかを見守りたいなと、そんなことを思った一冊でした。