R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く / 深沢仁

R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く (このライトノベルがすごい!文庫)

R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く (このライトノベルがすごい!文庫)

鏡を睨んでいた少女の背後に突如現れた青年。家族を失い、暴力組織に追われていた彼女を、不思議な力を持つその青年が助けて始まった二人の関係。まるで洋画を見ているような雰囲気語られていく物語でした。
銃弾の飛び交う中の、謎の青年と全てを失おうとしている少女の物語で、すかした感じの語りから浮かぶ情景はとても映画的。読み終わって映画を一本見終わった気分になるような一冊。そして、その雰囲気がとても魅力的な作品です。外国の街、銃、ホテルといった要素と文章から作られる印象が素敵。
ただ、それ以上に魅力を感じたのはアンジェリーナという少女のキャラクターと、彼女とフィリップの関係性。父親が裏稼業に手を染めていたことから、両親に捨てられ、妹は捕らわれ、最愛の家族を失った15歳の少女。追いつめられた彼女の前に突如現れて、彼女を救い、けれどそれ以上の関わりは避けようとするフィリップ。他に寄る辺がなかった彼女がフィリップに惹かれるというのはわかりやすい話ではあるのですが、その感情表現の仕方が良かったです。
純真さと真っ直ぐさにズルさ奔放さわがまま。気が強くて、それ以上に脆さがあって、うるさくて、理性より感情で動く、自覚と無自覚の間からどこか小悪魔的な魅力を放つような存在。アンジェリーナはまさに少女といった感じのヒロインで、その彼女となるべく人との関わりを持たないようにしていた異能者であるフィリップの関係性も良かったです。フィリップの格好つけながらどこかでヘタレている感じや、なんだかんだ言いながらアンジェリーナのことを気にしている様子がまた美味しいのです。
そんな感じで楽しめた一冊。ライトノベルではあまり無いように感じる作風なだけに、これからこの人がどんな作品を書いていくのか気になる作品でした。