ようこそ、古城ホテルへ 2 〜私をさがさないで〜 / 紅玉いづき

これは女の子たちががんばる話と言うよりは、女の子たちがたたかう話で、だからこそ彼女たちは決して負けなくて、私はこの話が好きなんだと思いました。
古城ホテル2巻はピィの過去と、フェノンの過去と区切りをつける2編のお話。1巻を読んだ時には、優しい、つばさ文庫の対象となるような子たちに向けた作品だと思っていたのですが、2巻は本領発揮というかなかなかに容赦のない展開でした。でも、私としてはこの苛烈さが好き。
ピィの話は、魔山で彼女が犯した罪と、背負った過去と、女主人としての現在の物語。魔山にさらわれたピィを助けに行く女主人たちという王道展開がありつつ、彼女を恨む兄弟子たちの想い、そして人間らしい傲慢さと身勝手さに溢れた導師たちの姿があり。全てが救われる綺麗事はなくても、古城ホテルの女主人たちは過去を抱えて、現在を生きる。それはどうしようもなく身勝手で、だからこその強い想いでもあって。
お互いを仲間として助けあいながら、自分自身の抱いた罪も罰も決して他人には預けずに、真正面から闘って、生きて、それでも折れそうになった時に、名前を読んで背中を支えてあげられる。だから、乗り越えてもう一歩前へと進んでいける。それが表に出てくるリ・ルゥだけでなく、それぞれに強烈にエゴを持って、激しいといってもいいような姿を見せる彼女たちが、マルグリットという場で見せてくれる、その繋がりの形と生き様がとても好きです。
彼女たちの過去は決して消えるものではなくて、これから傷つくことも血を流すことも多いのだと思います。それでもこれから4人で歩んでいく彼女たちの行く道を、見つめていたくなるような一冊でした。
ちなみに好きなキャラクターはリ・ルゥ。たぶんこの子は自分自身の弱さも脆さもちゃんと分かっていて、それでもこの強気で激しい気性を表に出して、毅然と己の信じるところを賭けて闘っているのだなあと思います。そして、そういうキャラに私は弱いです。あと、ヘンリーちゃんは色々と愛されすぎだと思います。しかしヘンリーちゃんが不憫可愛いのは揺るぎない事実。