ニーナとうさぎと魔法の戦車 4 / 兎月竜之介

「行こうか、クー」
「どこまでも、ね」

クーの元カノが現れて、エルザ荒れる! なニーナ4巻は、微塵も躊躇がないというか、吹っ切ったようにひたすらにだだ甘百合な一冊でした。それにしてもこのラビッツ、ドロシーにキキ、ニーナにアリス、クーにエルザと当たり前の様に百合カップル3組成立して、ひたすらいちゃいちゃしながらノロケあっているというすごい状況。「いいんですかこれ?」「いいんです!」と思わず川平慈英になってしまうような何か。
そんな訳で元カノ登場でそっちばかり見るクーにエルザが荒れて痴話喧嘩でみたいな感じなのですが、この二人の背負っているものとか性格とかが過去と併せて丁寧に描かれていくので、そこの気持ちのすれ違いと、そこから先の雨降って地固まるな展開に説得力があるのが良い感じ。没落貴族の生き残りで貴族のプライドだけにすがってきたエルザと、貧しい家の出で何とかたどり着いた学園では貴族に虐げられた上に病気を患ったクー。自分をからっぽだと思う二人がラビッツで出会い、反発して、けれど相手の中に自分と同じ物を見つけて、そして、二人でなら歩いていけると手をとって。
自信のなさが虚勢に繋がるエルザと、自信のなさで内にこもるクー、そんな二人でも、二人でなら歩いていける。そうやって築いてきたものがあるからこそ、あれだけ派手に喧嘩しても王子様は迎えに来て囚われのお姫様はそれを待っていて、そこからもうベタ過ぎる展開をしても全部オーライな感じになるのだと思います。愛だね、愛。
ただこのシリーズ、綺麗事すぎるラビッツの考えや行動が、そのまま正しさとして押し通されてしまうのがちょっと座りの悪い感じが。道を踏み外してしまった天才というのが相手方に来ることの多いシリーズなのですが、何かを為そうとあがいてもがいて、もうどうしようもなくて踏み外した人のことを、真正面から綺麗事で苦労もなく踏みにじるのはあんまり面白くは感じないのです。綺麗事は叶わないからこそ美しいのだと、個人的には思います。