侵略教師星人ユーマ / エドワード・スミス

侵略教師星人ユーマ (メディアワークス文庫)

侵略教師星人ユーマ (メディアワークス文庫)

10年ほど前に、アゾルト星人と名乗る異星人の宇宙船が降ってきて、現在もそれが海で確かな存在感を放ち続けている港町。そんな港町で、ある理由により宇宙人アレルギーとなった高校生舞依が出会ったのは、宇宙船に向けて自分こそ真の侵略者であると叫び散らす男で、しかもそれが舞依の担任教師&お隣さんだったものだから、というお話。
自称宇宙人の男ユーマとその弟で超美少年なソーマという二人の隣人、特にユーマの存在は舞依の宇宙人アレルギーを刺激します。その理由が、母親が病気で亡くなった時期と、宇宙船の襲来が被っていたというだけであっても、理屈で割り切れないものがそこにはあって。ただ、そんな舞依を他所に、ユーマはその真っ直ぐな熱血指導で生徒たちの心を掴んでいきます。そしてこの作品の魅力はそのユーマのキャラクター。何かある度に自称宇宙人の壮大なスケールの話をかましながらも、実直で真摯で生徒たちを教え導くことにどこまでも熱心で、そしてそれを実現させるだけのバカ馬力をもって真っ直ぐに突っ込んでいく。だからこそ、自称侵略宇宙人であっても生徒たちからも、周りからも信頼を得ていきます。
そんなユーマと、宇宙人アレルギーな舞依。最悪の出会いに最悪の愛称からスタートした二人の関係も、なんとか舞依と向きあおうとするユーマと、自分自身でもアレルギーを乗り越えたいと思っていた舞依が、少しずつ、失敗しながらでも歩み寄っていくことで、いつしか信頼関係で結ばれていく。まさに爽やか教育ドラマを地で行く展開に、アゾルト星人vsヴァルトラ星人という、ウルトラシリーズ的な対決(もちろん最後は巨大化バトル!)がついて、熱くけれど爽やかに終わるという読み心地の良い作品でした。
ただ、個人的には舞依の心情の移り変わりやユーマの言っていることに疑問符が浮かんでしまう場面があって、最後までノりきれなかったところがありました。舞依の宇宙人アレルギーの彼女にとっての重さが掴みきれなかったのと、地球ラブで人間を特別扱いはしないと言いながら巨大化戦闘で海の環境を破壊しているように見えるユーマの姿に違和感が。ただ、後者は特撮お約束みたいなものなので、あえてそこに突っ込んでも仕方が無いとはわかっているのですが……。