- 作者: 大間九郎,葛西心
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2012/05/11
- メディア: 文庫
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暴君なオカルト探偵の姉と、元狐憑きの少年玉藻。二人がオカルト事件に挑むという形をとった話ですが、推理とか事件とかそういうものではなくて、主眼はこの捻れた境遇に追い込まれた玉藻という少年が、周りの人々との、周りの世界との関係の中で、どう生きていくのかということ。1年しかまともな人としての経験がなく、狐憑きだったころに晒された境遇に根っこのところを捻じ曲げられて、それでも生きている少年。何重にも捻れて破壊衝動となって吹き出すその心の奥に、誰かを守りたい、正しいことを為したいという、ただ純粋で、純粋すぎるからこそねじ曲げてしまいこむしかなかった、想いが透けて見えて。
ある事情が明かされてその意味は分かるのですが、共依存的に玉藻にべったりな姉、彼に対してストーカー的な一面を見せるイソラ。巻き起こる悪趣味で理不尽なオカルト事件と、人の抱く黒い感情。そんなもので一面を覆い尽くされながらも、それでも、その芯の部分にあるのは、人の抱える愛だったり、正しさだったり。一番脆くて純粋なものがたしかにそこにあると謳うのであれば、どんなにぐちゃぐちゃになろうとも、やっぱりこれはどこまでもポジティブな人間賛歌の物語であるのだろうなと思いました。
いわゆるラノベ的要素から悪趣味な事件までちょっと色々なものが極端すぎて、読んでいて気持ち悪さを感じる部分も多々あったりして、正直ちょっと辛いところのある作品ではあったのですが、それでも、この痛切さというか、真摯に魅力を感じる一冊でした。