- 作者: 田中ロミオ,戸部淑
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/07/18
- メディア: 文庫
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学校の話は親からの要望でつくられた学校でわたしが3人の子ども(8歳)の先生役になる話、ですがハートフルとかそういう言葉とは無縁の、生意気な生徒! 学級崩壊! PTAによる言語統制! モンスターペアレンツ襲来! そして明らかになる家庭環境! という怒涛の展開。オブラートに包む気もない理不尽なモンペ襲来描写は正直読んでいてイラッと来るレベルのもので、わたしが切れて反抗(しかし実力行使)を始めた当たりでは喝采をあげたくもなったりしましたが、その先の展開は予想を遥か彼方に裏切ってなんだかとんでもないことに。
彼ら彼女らの秘密が多方面から明らかになると同時に世にも奇妙な物語的な何かが発生して、ちょっとゾッとするホラー風味もありつつ、不思議な舞台裏世界もあり、でも最後はわたしと生徒たちの心あたたまる話に落ちた……ような。子どもの教育ってなんだろうと深遠なことをさらっと考えさせながら、不思議な現象は妖精さん管轄外で不思議なままに、何だかんだで頑張っちゃうわたしの姿も微笑ましかったり、読み終わった後に色々なものが残ってどれ一つはっきりとはしないような不思議な話でした。しかしこの構成で物語を成立させるのは正直すごいと思います。
そしてヒトモニュメント計画の顛末話は、気がつけばAIと自我と認識というSFちっくな話をかなり真面目にやっていて呆気にとられたり。わたしとKの失態は正直何もかも擁護のしようがない不祥事な気がしてなりませんが、まあそれはそれとして。認識できるものと対話する、認識できないものと対話しない、対話できるものに自我を認める、では魂ってなあに? みたいな話がモニュメントドタバタ劇とともに語られ、私たちの認識する世界って何とさらっと匂わせつつクスノキの里崩壊! みたいな。この巻のどちらの話でも語られる、見える人にしか見えないということを踏まえて、けれど現実世界に影響を振るう、そして舞台裏の世界にもしれっと現れる妖精さんってなんでしょう、という疑問も膨らむようなお話でした。
そんな感じの一冊。ファンタジック世界や妖精さんほわほわ成分が薄れて、ブラックさが加工なしのままに過剰供給されている気がしてちょっとどうなんだろうと思いつつも、この巻も楽しませていただきました。