ベン・トー 9 おかずたっぷり! 具だくさん! 香り豊かな欧風カレー弁当すぺしゃる305円 / アサウラ

馬鹿と下心が乱舞する前半から、火傷するくらいに熱い展開の後半へという流れはいつも通りで、でも金城と槍水のかつての先輩でもある秋鹿の存在が、いつも以上に少年マンガ的な熱さを感じさせてくれるような一冊でした。
HP同好会の冬合宿は、気が付けば佐藤のハーレムになっている感じ。槍水先輩の好感度は確実に上げつつ、著莪との距離感は電話越しでも近く、白粉は相変わらずクリーチャーで、画面の向こうで無防備な姿を晒した白梅様は意外と佐藤のことを気に入っているように見えなくもなく、という言ってしまえば女ばかりのドキドキ冬合宿。ですが、やっていることが下心全開な馬鹿っぽい企みだったり、結局最後のところでは臆病だったりするので、不思議と緩い感じにならないのがこの作品らしくもあり。そして差し挟まれる家族エピソードは相変わらず破壊力が高いというか、ネネさん(母)がやばいです。
そしてそんなハーレムのような展開で何故か急接近するのは茉莉花との関係。ロリはやめとけという著莪の忠告も虚しく、二人で雪山遭難からの積極的な茉莉花とのあれなイベントと、地の文で警戒されまくる東京都の存在がもう何がなんだか。そして後半で距離感が縮まるのも真希乃な当たりこれはもうロリコンのそしりは免れないと思いました。何あのドキドキ車内イベント。
そんなこんなありつつも後半は熱いバトル。エコバックを広げる老け顔の青年という時点で脱力ものですが、その秋鹿が槍水への勝利と最強を追い求める理由が透けてくると、佐藤との闘いに違った意味が生まれてきて。壊れてしまったHP部への悔恨を、何とか自分の力で晴らそうと手の届かない最強に手を伸ばそうとした不器用な先輩と、詳しい事情は知らずとも目の前の槍水の笑顔を守ると誓った後輩。目指すところは同じでも道の違う二人のぶつかり合いの中で、悪役に徹しようとしていた秋鹿から佐藤へ授けられるスーパーでの闘い方の極意。秋鹿の不器用な優しさと、佐藤の真っ直ぐな強さの衝突は、実に熱くて良いものでした。
少しづつ明らかになってきて、でもまだその実態の掴めないHP部崩壊の真実。槍水先輩が抱えた一番大きな闇はそこにあって、やはりこのシリーズは少しずつ強くなっていく佐藤がそこに手を伸ばすことがこの先の大きな展開になっていくのだろうなと感じます。