スカイ・ワールド #2 / 瀬尾つかさ

スカイ・ワールド2 (富士見ファンタジア文庫)

スカイ・ワールド2 (富士見ファンタジア文庫)

やっぱりこのシリーズは好きだと思った2巻でした。
ジュンたちは第7軌道へと上り、物語の前半はいわゆるMMORPGのレイドボス戦をテーマにしたお話で、後半はかすみが巻き込まれてしまった呪いのクエストの話。ネットゲームの世界が現実になってしまうという設定ながら深刻感が薄いのは相変わらずで、だからこそゲーム的ファンタジー世界でのバトルなんだけど本人たちにとってはこの世界のことが全てでもあるという、言ってしまえば都合の良いバランスを作り出せていて、そこが良いなあと思うのです。
大規模戦闘は、ギルドのピラミッド型組織としての硬直だとか、クラスの違いによる味方間の役割分担と連携だとか、普通のゲームではないMMORPGとしての面白さを感じさせてくれるもので、そういうゲームをやったことがない身としてはなるほどそういうことになっているのかと興味を惹かれます。クラウドコントローラの概念などは初めて知ったので、MMORPGのジョブシステムはこういう意味があるのだなあと感心。
そしてお話的には後半の「蓬莱皇帝の復活」クエストでかすみが大変なことに。偶然巻き込まれてしまった大規模隠しクエストからかすみのバッテリー切れという現実の死の危機を前にして、奮闘するジュンとギルド幽幻旅団との闘い、そして立ち上がる仲間たちと、ワクワクさせてくれる展開になっていました。この辺でもやっぱり深刻になりきらないいい意味での軽さ、みたいなものが、爽やかさと青い空のイメージに合っていて、このシリーズの雰囲気を作っているのかなと思ったり。
そんなこともありつつ人間関係はかすみ→ジュンへの想いがますます強くなって、ジュンがいろいろな人にはっきりしなさいと言われるような感じに。この幸せな状態は長くは続かないことは知りつつ、かすみをこのまま上の軌道に連れて行くことも正しいか分からず、サクヤとの関係もあってうだうだしているジュンには、悩むのもわかるけどかすみが可哀想だろうという気も。あと、ハーレムパーティー化が著しいのですが、これからエリが不憫なことにならないといいなあとか。
ただ、瀬尾つかさ作品として楽しみなのはそれよりも、この世界とは何なのかということ。NPC視点での描写があった時点でもうこれがMMORPGに取り込まれたのではなく異世界に迷い込んだことは確定的で、ではスカイワールドとは何なのか、今回起動した世界変動をもたらすイベントの目的、アリスの言うあの方の謎。第一軌道に何があるのかまで含めて、大きいだろう世界観の仕掛けが少しずつ垣間見えつつあって、この先がとても楽しみでなりません。