煉獄姫 六幕 / 藤原祐

煉獄姫 六幕 (電撃文庫)

煉獄姫 六幕 (電撃文庫)

ヴィオールとの戦いの決着が描かれる最終巻。クーデターを起こされた形の瑩国の未来、煉獄の毒気という諸刃の剣の上に成り立つ社会、そういったものもありながら、けれどこれは人と人の繋がりの物語であり、血の繋がらない家族の物語であり、そういう意味でまさしく藤原祐の作品だったのだと思いました。
ローレン=エヌ=コーンフィールドによって生み出された人造人間であるフォグ、キリエ、レキュリィ、キアス。父たるローレンが彼らを生み出した訳、彼らに残したもの、彼らに託したもの。それは一人でしかなかったからこそ完全を目指したユヴィオールとは全く別のもので。全く違ったからこそ、圧倒的に不利な状況の中から、フォグたちは立ち向かうことができる。
ローレンをそしてレキュリィを支え続けたカルブルックの誇り。同じ出身を持つアイリス=デーンとイオの間に生まれた信頼。それでもアルトの友だちだったキリエが使い捨ての命を奪われても掴みたかった未来。アルトとフォグ、そしてイオの間にあった家族の絆。そして何よりも、人造人間であるフォグと存在を抹消された煉獄の第一皇女アルトの間にあった何よりも強い繋がり。そこには裏打ちなどなくて、無いからこそ強くて、だからこそ未来を願い、前に進むことができて。激しかった闘いで、フォグたちとユヴィオールの運命を分けたのものも、まさにそこであったのだと思いました。
数えきれない犠牲の上に迎えるラストシーン。それでも、彼と彼女がいるから、彼らだから、これは良かったのだと、大丈夫なのだと、笑って暮らせる未来があるのだと、そんなふうに思える物語でした。良かったです。
しかし最後まで私はキリエが好きすぎて困る。