はたらく魔王さま! 8 / 和ケ原聡司

はたらく魔王さま! (8) (電撃文庫)

はたらく魔王さま! (8) (電撃文庫)

このシリーズはここ何巻かかけて大きな世界観が背景にあることをちょっとずつ出したり、明らかに後の伏線になりそうな出来事が起きたりと、かなり大きな風呂敷を広げていっている印象があったのですが、それが気のせいなんかじゃなかったと感じる激動の8巻でした。
という訳で、恵美が突然のエンテ・イスラへの里帰りを決めて、そして戻らなくなるというところから始まる話。少しずつ変わっていった関係、作られたのは擬似家族のような集まり、こちらの世界で出会った友人たち。突きつけられるのはその幸せが一体何であったのか。もう一度問われるのは、真奥や恵美が関わる=ちーちゃんや鈴木さんをエンテ・イスラの事情に巻き込むという事実、この世界に暮らし続けるだけで高まっていた危険性。
魔族と天使が手を組むような動き、狙われたのは誰か、現れたイェソドの欠片とノルド、この世界について。ここまでに撒かれていた全ての伏線は大きな一つの流れにまとまるように動き出して、けれど真奥たちの視点からだと何も事情がわからないまま、突きつけられるのは迫り来る大きな危険と、ギリギリの所で大きな犠牲を払ってそれを凌いだという現実だけ。
何か重大な真実を掴めていないままに振り回される話にはもどかしさがあって、広げられた話がかなり複雑に込み入っているだけに予想しようにも理解しようにも混乱するところが大きいのですが、今はとにかくこの状況で試された彼らの関係に、真奥が最後にああ言ってくれただけでもシリーズを追いかけてきた身としては嬉しい訳で。未来を創ると決めたからには、過去にはきっちり落とし前をつけてきてもらおうじゃないかと、そんなことを思いつつ次の巻を楽しみにしていたいと思います。
あと、個人的には自分自身の意志で動いた鈴乃の姿と、意外な頑張りを見せた漆原が良かったなあと思います。というか、押入れニート漆原さんやる気さえ出せば割とチートキャラな気が……!