- 作者: 山形石雄,宮城
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 文庫
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いやしかしまさかこう来るとは。
細かい仕掛けが重ねられたストーリー展開と激しい戦いに翻弄されながら読んでいたら、大外からグーで殴られたような衝撃がラストにあったのでした。
以下ネタバレありです。
人の心に作用できる、そういう能力をもった凶魔がいること。テグネウの人を操る能力がそれの上位互換であり、凶魔の力がアドレットに効果が薄かったこと。黒の徒花たるフレミーを、テグネウの送った七人目は護るであろうこと。そして、操られたロロニアのアドレットへ向ける感情も行動も、次第にそれ以外が失われていく心理描写もまた、アドレットがフレミーに向けているものに酷似していること。
ここまできちんと情報が提示されていた上で、完全に引っかかたのだからもうお手上げというしかありません。普通にハンスの行動が荒っぽいものだと思っていたのですが、よくよく考えればどう考えてもおかしいのはアドレットの方。けれどそれがおかしいと思わせないだけの戦いに継ぐ戦い、謎に継ぐ謎、そして主人公たるアドレットがずっとフレミーに向け続けてきた想い。ここまでやられたら完全に読者の立場としてはアドレット側にいるわけで。
そしてそれを含めて全てを「愛」という抽象的かつ確実性のないものに賭けていたテグネウの敵役としての凄み。思えばこのシリーズは、ゴルドフにしろモーラにしろ、ずっと愛の話をしてきた訳で、それこそが人の人たる所以の様に思わせた上で、その根本にこそ敵の最大の仕掛けがあったというのはなかなか衝撃が大きかったです。
さてこれで大きな謎は明かされて物語はクライマックスへと入っていくのでしょうけど、この事実を知ったアドレットは、フレミーはテグネウの意図したとおりに絶望するのか、そこにいち早く気がついたハンスがどのような行動に出るのか、続きがとても楽しみです。