独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑) / 野崎まど

ついに一部のファン待望の続編が発売されたまど劇場。
最近ようやく野崎まどのこういう作品に慣れてきて、今回もなるほどいつもの野崎まどだなと楽しめたのですが、冷静に考えるとやっぱり頭おかしいよねこの人というか、一体何をどうしたらこんな着想を得るに至ったのかこれっぽっちも理解できない短編が怒涛のように並んでいるので改めて天才だと思うのでした。
イラストからタイポグラフィーから、これはもはや小説なのかと思うようなものまで、紙面(からカバー裏まで)を目いっぱいに使って描かれる大真面目なフリして何かが確実におかしい、シュールだったり毒だったりが混じったユーモア短編(?)の数々は、読んでいて思わず笑うので相変わらず外では読めない仕上がり。イメージ的には一般的な小説というよりも、「劇場」の名の通り小劇団がコントみたいなオムニバス劇をやっている、みたいなものをイメージしたほうが多分わかりやすいかと思います。そしてその奇想とキレと絶妙なくだらなさよ。
開幕からなろう+医療という危険なネタをぶっこんできたかと思えば、2本目は看板の店員落書きで構成されるカフェを舞台にした人間関係の一大巨編というその発想はあったような無かったようなという代物。その後もお前は深層の令嬢をいったいなんだと思ってるんだな「深層の大令嬢」。時代の移り変わりにちょっとウッとなる「二十人委員会」。前巻のラーメン的な笑い再びの「シンデレラアローズ」。題名で既にオチている感のある「大オーク」。ブラックすぎて笑うに笑えない「まごのてコレクション」。すっかり騙されて思わず読み返した「クウ!」にまさかの巻末広告芸まで多種多様なネタ(かなりダジャレ組み合わせ系多めでしたが!)で笑わせてくれましたが、中でも「大相撲秋場所フィギュア中継」が屈指の破壊力であったと思います。冒頭から脳内再生されるアナウンサーと解説で始まってまさかこういうネタになるとは……。
作中の短編で電子書籍にコメントを表示する「ワイワイ書籍」というネタがあるのですが、この本こそまさにそういう形で楽しむべき本なんじゃないかと思ったり。その時にはタグに「その発想はなかった」と「その発想はいらなかった」が2つ並ぶことうけあいな一冊。人によっても短編ごとの当たり外れは大きい気がしますが、まあ騙されたと思って前巻から読めばいいんじゃないかと思います。
あ、ちなみに表紙は詐欺です! (裏表紙参照)