艦隊これくしょん−艦これ− いつか静かな海で 2 / 田中謙介・C2機関・さいとー栄

原作のゲームもそうだったと思うのですが、この作品、明確な敵も、何のために闘っているのかも、どこで闘っているのかも描かれません。少女の姿をとった艦娘たちは何者かと戦い続けて、お互いの絆を深めて、そうやって過ごしている。そこに描かれるのは、かつて戦禍の中に沈んでいった彼女たちの叶えられなかった想いだとか、そこにあっただろう決意や信念だとか、そういうものたちで。
だからなのか、これは凄く死後の世界っぽい作品だと思うのです。とても抽象的で輪郭の掴めない世界の中で、その身におった役割や果たせなかった想いを繰り返し再生し続けるような。そしてその魂の在り方は、まさに今の時代に役割をおって生きる同じ名前の護衛艦へと受け継がれていくという。であれば、この作品自体が一つのレクイエムというか、本来の意味での過去に手向けた鎮魂歌なのかなあと、そんなふうに思うのでした。