安達としまむら 4 / 入間人間

今回のあらすじ。新しい学年になってクラスは一緒になったもののしまむらが近くの席の子たちと昼ごはんを食べるようになってしまい、やきもちを焼きつつやさぐれてた安達さん。しかし怪しげな占い師の言葉に背中を押されてしまむらにアタックをしかけ、ついにはしまむら家へのお泊りを勝ち取るのだった。
というまあ、毎度のことながら言ってみればそれだけの話を240ページにわたって展開される訳ですよ。しかしですね、これがほんとヤバい。安達としまむら心理的一歩手前感のあるいちゃいちゃに床をバンバン叩きたくなるのはいつものことなのですが、入間人間の空気感の描写の上手さが遺憾なく発揮されているところに、安達さんのしまむらさん依存がちょっとのっぴきならない領域に足を踏み入れていてこっちとしてはハラハラなのです。
しまむらは割と来る者拒まずで友人もいて家族ともそれなりに上手く行っていて。安達は根っこのところが個人主義で群れないしつるまないし一人でも大丈夫、そして家族とはあんまり上手く行っていない。そんな誰もいなかったし誰もいなくて大丈夫だった安達さんがしまむらさんに傾いちゃったものだから、もうあなた意外他に誰もいないという視野狭窄モードに完全に入ったまま、どんどん深みにはまっていっています。そしてこの巻で、誰にもとられたくないとついに自分から押していくことを決意してしまったのでこれもうヤバいでしょうと。
しまむらの受け流していく性格もあってさらっとした空気を保っているのですが、なにかこう一歩踏み外せばそこは深い沼、みたいな。安達としまむらが、何かを間違えてまーちゃんとみーくんになってもおかしくないよねこれ、みたいな。
昼休みにしまむらが周りの席の子たちと一緒にご飯を食べている場面。そこに突如異物として割り込んでくる安達。その場の空気。意に介さない安達。状況を冷静に見てるしまむら

分かっていることは、抜け出てしまった空気の行き先。
席替えを待たずして、サンチョたちとの関係は途切れるだろうということだ。

その客観的な、だからこそ自らの意志が薄いしまむらが、二人だけでいいという安達を受け入れてしまうのなら。そこから閉じていく二人だけの世界こそ、百合モノとしての最高の見せ所だと期待をしつつ。適度に突き放しながら大型犬をあやすような二人の関係がこの先続いてもそれもまた一興と思うのでした。はたまた、病気のような魔法が解けて、新しい世界が始まる未来であっても。
高校生という限られた時間、限られた場所の中で、薄皮一枚のバランスを感じながら。