時空建築幻視譚 マホロミ 4 / 冬目景

完結。作者が描いていて楽しくて仕方がなかったというのも分かる、まさに趣味色全開! な作品だったと思います。取り壊しが決まった古い建物、そこに残る記憶が見える青年がその願いに触れ、思い残しを叶えようとしていく物語は建物や街並みへの愛情が見えるものでしたし、そしてそんな主人公が想いを寄せるヒロインの黒髪ストレートロング! 浮世離れ系ミステリアス! という冬目ヒロインっぷりがもう。
ただその分、建物という部分に興味があまりない私のような読者は入り込みきれないところがあったかなあという気も。とはいえ、それを巡る物語の優しさに昔の冬目作品にはなかった、今の冬目作品らしい温かみがあって、その物語の中で真百合というヒロインが、過去に区切りをつけて明るい未来に方を向いて終われるというのがなんだか感慨深く思うのです。ぜんぜん違う作風だとは分かっていても、やっぱりどうしても「羊のうた」の千砂の影がちらつくようなところはあったので……。