淡島百景 1 / 志村貴子

淡島百景 1

淡島百景 1

歌劇学校とその寮を舞台に人間関係を繋ぎ時を繋ぎ少女たちの青春がオムニバスに描かれる連作短編。それを志村貴子が描いたらそりゃあ素晴らしいに決まっているじゃないかと思ってはいたのですが、その中でも第3話「岡部絵美と小野田幸恵」が本当にもうね、これがね。
その場にも行けなかった子。誰よりも美しかった子。そんな彼女に恋をした地味な子。才能、嫉妬、揺れる感情、壊れたもの、壊されたもの。季節は過ぎて大人になった彼女たちの歩んだ道。三つの時代、三人の人物から浮かび上がる、そこにあったもの。こんなに淡く儚いのに、読み終えて息をするのを忘れていたことに気付くくらいに鮮烈で。なんて美しくて醜いものなのだろうと。
本当に志村貴子という人は、こういう言葉にあらわせないような心の動きをマンガという形で描くのが上手いのだと改めて感じる一遍でした。ただため息をつくばかりです。