THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3 / バンダイナムコエンターテインメント・門司雪

これを読んで伊吹翼というのがどういうキャラクターなのか、ようやく分かった気がします。
ミリオンのゲームをやっていない身としては、ドラマCDなんかでしか触れる機会のない翼は過剰なほどの才能とそれ以上の自分勝手さをもった、トラブルメイカーというよりも単純に困った子という印象。だから、この話の中でコーラスなのに合わせる気が欠片もない彼女に対してジュリアが怒ったのは割とそのまんま翼に対して私が感じていたことで、でもそこで翼が態度を改めるならこれはそれだけの話になっていたはずのもの。ただ、これはそうじゃなかった。
翼が見ている夢。感じていること。自分に正直に、夢に夢見るように憧れて。プロという立場で描かれる以上どうしても大人としての分別を求めてしまうけれど、この子は大きな可能性を秘めた、まだ14歳の純粋すぎるくらいに純粋な一人の少女なんだなと。そしてそれが、歌に対して真摯であるが故に、ある意味で自分にできる範囲を決めてしまっていたジュリアを巻き込んで、夢に向かって突き抜けていくライブシーンに繋がる。
もちろん今の翼ではコーラスは失敗するし、憧れの美希のバックダンサーにはなれないし、そこは大人にならなければいけないと言われてしまう(あの美希に言われるところに成長と黄色の系譜を感じて感慨深いのですが)のですが、今まさに成長していくアイドルの物語として、ギリギリのバランスを走っていく素晴らしいものを見せてくれたと思います。ジュリアと翼を繋いだ瑞希の存在も良かった。まだ迷いを残したジュリアに即断で新曲でいけると推した姿は、ちょっと3人で一番かっこよかったんじゃないかと。
そしてこのライブシーンで披露される新曲の「アイル」がCDでついてくる、しかも本当の完全新曲としてというのがアイマスの強さだなあと。だって作詞作曲nano.RIPEということは、これはあくまでもジュリアの曲で、それを翼が歌っているのだということで、そこにこの歌詞を重ねられたらもう。これは翼の歌であると同時に、圧倒的な才能で突き抜けていく翼に彼女が何を託したのか、音に、言葉に、そこまで想像が膨らむような一曲だったと思います。