【小説感想】ハル遠カラジ 2 / 遍柳一

 

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

 

 病を患ったロボットのテスタと、そのロボットに育てられた野生児の少女ハルが、病を治す術を求めて、ほとんどの人類が消えてしまった世界を旅する物語。1巻が親子の物語であったとすると、これは友人の物語なのだと思います。ハルとイリナの間に芽生え始めた関係であったり、リンという女性に仕え続けたアニラであったり、テスタと旧友のモディンとの関係であったり。そしてロボットであるテスタの語りは、人間ではない論理的な思考と、AIらしからざる感情が溶け合って、非常に感傷的で美しい手触りがあります。

そう、長谷敏司による帯コメントで言われていることがまさにで、本当に狂おしく感傷的で、美しい物語だと思うのです。突然、滅びてしまった世界の中を行く、ロボットと少女。残された自然と動き続ける機械や都市。そこで出会う者たちとの会話は、基本的に過去に向かっていて、そこには滅びの匂いと、その先に続いてしまったものの感傷があります。贖罪のために子どもたちを守ろうとしたリンと仕え続けたアニラの関係とか、誰も来ない喫茶店を続ける旧世代ロボの話とか、胸にくるものが。

けれどこの物語は終わってしまった世界の中で感傷に浸るだけではありません。ロボットと彼女が育てた少女の間には、ありえるはずのない親子の情が生まれ、己の身を護ることだけで必死に生きてきた野生児は、同年代の少女との暮らしの中で、自分自身の欠けているものと、人間との付き合い方を学んでいく。人が滅びた世界で、身につけても意味があるかわからない社会性なんていうものを、それでも彼女たちは教え、学んでいく、変わっていく。いつでも、あるかどうかもわからない、未来を向いている。それが、たまらなく尊く、美しい作品だと思います。

少しずつ明らかになっていく世界にまつわる謎が浮き彫りにするのは、滅びるべくして滅びた人間たちの姿で、決して明るい見通しは許してくれません。それでも彼女たちの旅の先に、わずかでも光あれと思います。