【マンガ感想】メランコリア 上巻・下巻 / 道満晴明

 

メランコリア 上 (ヤングジャンプコミックス)

メランコリア 上 (ヤングジャンプコミックス)

 
メランコリア 下 (ヤングジャンプコミックス)

メランコリア 下 (ヤングジャンプコミックス)

 

10年部屋に引きこもった少女が目覚めると外では世界が滅びていて、飼い猫は突然喋りだし、いきなり決断を迫られる。そんな短編で始まる短編集は作者独特のセンスが炸裂したものになっていました。

不条理なくらいにぶっ飛んだ発想で次から次へと語られる短編はキャラクターも絵もギミックも、独特の空気、独特のセンスで満ちています。不思議な事が当たり前に起きて、とびきりシュールで理不尽だけど、意外と俗っぽくてキャッチーで、ダウナーな雰囲気と描かれる関係が凄く馴染むというか、波長が合う人には凄く気持ちが良いものになっています。私はすごく好き。

短編はどれも好きですが、中でも脚を得る代わりに声を失う人魚姫の設定を下敷きにしながら、斜め上の方向に展開していき、そして最後に最高の百合を見せてくれる「おとぎ話」が最高でした。

てんでばらばらに思える短編が連なっていくのですが、人類の滅亡という共通項が進むほどに色濃くなり、それぞれの話が思いもかけないところで繋がって、作品は上から下へ、下から上へと大きな円環を描きます。これがなんというか、美しい構造というより、ものすごい不可思議なものを読んだような感じ。最後まで読むと、奇妙で、けれどどうしようもなく惹かれる一つのオブジェが出来上がったような印象を受ける作品でした。